分析レポート

VALUENEXの解析ツールを使って、当社が独自に分析している様々なレポートをお届けします。ぜひご活用ください。

 

2019.05.08.

+下町ロケットの再現:AgriTech(アグリテック)が進む日本農業

昨年、TBSで放送されていた大ヒットドラマ『下町ロケット』は記憶に新しい。新年にもSPドラマが放送され、目にした方も多かったのではないだろうか。かくいう著者もその中の一人である。今回のシーズンでは農業がフォーカスされており、「日本農業を救いたい」「おいしいお米を消費者に届けたい」という信念のもと、無人トラクタの開発・販売に向け様々な壁を乗り越えて行く姿に涙を誘われた視聴者は多かったであろう。 かつて、日本にとって欠かすことのできなかった農業であるが、現在は少子高齢化の余波を受け、危機的状況に陥っている。農林水産省によると、2018年の農業就業人口は175.3万人(前年比:96.5%)と 1995年の半数以下であり、65歳以上の占める割合は68.4%(120.0万人)に上る(図1)。日本の農業は深刻な労働力不足とそれに伴う技術継承の難しさに直面しているのだ。つまり、ドラマの中だけでなく、現実世界でも農業の高齢化は深刻な問題なのである。しかし、こうした危機的状況を解決する手段として注目が集まっている取り組みがある。アグリテックだ [1] 。アグリテックとは「農業」を意味する「Agriculture」と「技術」を意味する「Technology」を組み合わせた造語であり、AIやIoTといった科学技術を農業に活用し、作業の効率化やシステム化を行うことを意味する[2]。ドローンによるセンシング技術や、農薬・肥料といった供給物の情報を取得し収穫量を管理する技術、そして『下町ロケット』で活躍した無人トラクタもアグリテックである。近年、米国や中国でも注目されている、まさに最先端の農業といえよう。 そこで、本書では、このアグリテックの技術領域の中にはどういったプレーヤーが存在し、そのプレーヤーごとにどのような特色があるのか、そしてアグリテックの技術領域に新規参入している企業の特許を紐解くことで、今後どのような企業がアグリテックに関わってくるのかを考察する。


2019.04.17.

+ブロックチェーンが描く未来とは

仮想通貨バブルに沸いた2017年から一転し、2018年は仮想通貨バブル「崩壊」の年となった。代表的な仮想通貨であるビットコインは1年間で70%以上値を下げ、投機対象としての価値を大きく下げた[1]。  その一方で、仮想通貨のコア技術であるブロックチェーンに関する技術開発は勢いを失っていない。ブロックチェーン関連の特許は年々増加しており、実用、実証例も仮想通貨を中心とする金融業界にとどまらず、様々な用途に使われ始めている。例えば、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングは2018年にブロックチェーンを利用してワインの生産から販売までを管理する「ワイン・ブロックチェーン」の実証実験を開始している[2]。  本レポートではブロックチェーン関連特許の近年動向を俯瞰解析することで、今後ブロックチェーン技術が向かっていく方向性、その応用可能性について有用な示唆を得ることを目的とする。


2019.04.03.

+250兆円市場「空飛ぶクルマ」の覇者は誰か?

自動車業界がにわかに騒がしい。2018年10月、トヨタ自動車(7203)とソフトバンク(9984)が新会社を設立し、次世代MaaS (Mobility as a Service)の普及を宣言したのは記憶に新しい。それだけではなく、エリア限定の完全自動運転(レベル4)に向けた実証試験が着々と行われている。また、電動自動車についても、国外に比べると出遅れた感はあるが、確実に電動化へと向かっている。  2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーAG・CEOのディエター・チェッチェ氏が上記の動きを予見し、「CASE」と表現したことがいよいよ現実になりつつある。 「CASE」の定義をもう一度確認しておくと、Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェア&サービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとったキーワードである。  しかし、この4つの流れに加えて、SFの話ではなく、「空飛ぶクルマ」すなわち、Sky carの「S」が加わり、「CASES」になろうとしている。「空飛ぶクルマ」の市場は世界で250兆円 とも言われ、参入を表明する企業は日々増えており、ボーイングやアストンマーチンなどの航空機メーカ やドローンメーカの参入が本格化しつつある。その流れを受けて、政府も「空の移動革命に向けたロードマップ(案)」を2018年12月に作成し、民間の実証試験と合わせて、制度や体制の整備の準備を始めている。ロードマップ(案)によれば、「空飛ぶクルマ」は2023年を事業スタートの目標としており、4年後には「空飛ぶクルマ」を見ることが珍しくない世の中になっているのである。  こうした大きな変化がある中で、「空飛ぶクルマ」という名前から自動車メーカがそのまま、空を制することができるかと言えば、そうはならない可能性がある。本レポートでは技術の側面から、新たなる空の覇者の可能性を検証する。なお、「空飛ぶ車」と表記している記事や文書もあるが、本レポートでは「空飛ぶクルマ」と表現している。


2019.03.20.

+オリンピック種目に追加されたサーフィンの関連技術分析からみえてきたこと

2016年8月、リオデジャネイロで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年の東京オリンピックでサーフィンが初めてオリンピック競技になることが承認された。さらに今年2月、2024年のパリオリンピックでも追加種目候補となり、サーフィン競技は一躍注目を浴びている。  国内ではややマイナーなイメージがあるサーフィンであるが、世界では、米国やヨーロッパなどを中心に参加人口は以前から拡大基調にあり、世界の参加人口は3500万人とも4000万人ともいわれている(それゆえ、オリンピックにも採用されたといえよう)。国内でも、近年参加人口の低迷が危惧されていたものの、オリンピック種目採用後、2018年8月都内に人工サーフィン施設『Citywave Tokyo』がオープンし、千葉県でも大規模な人工サーフィン施設が計画中であるなど、サーフィン参加人口拡大への期待が高まっている。 ここで、サーフィンの道具に目を転じてみると、残念ながら、参加人口の多い米豪の海外勢ブランドが主流となっているのが実情である。スポーツ用品は作りこみが必要な製品であり、中でもサーフボードは、ライダーのレベルや体格等の他、使用する自然状況なども加味する必要があるため、カスタマイズがより重要となってくる。すり合わせを得意とし、モノづくりに軸足をおく日本での技術開発はどうなっているのであろうか。 本レポートでは、サーフィンに関連する技術開発動向を、特許情報に基づき概観し、オリンピックへの採用を契機に期待される技術の動きについて紹介する。 なお、分析にはVALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰解析ツールTechRadarを用いた。


2019.03.06.

+GAFAの隙間をつく

日本のGDPは4,949(10億ドル) で世界第三位、富裕者層の数も約300万人 であり、やはり世界第三位である(図1)。それにもかかわらず、世界の成長率ランキングでは、ワースト7に入っている。低成長の国には、ジンバブエ、ギニア、ガボン、パプアニューギニア、コンゴ、ハイチ、コートジボワール、ジャマイカ、北朝鮮のような、そもそもお金がないために経済が成長しない国々が並んでいる(図2)。この中に日本が入ることは、もはや先進国ではないのではないかと思えてくる。統計上は富裕国であるにもかかわらず、経済が発展しないのは、この20年間、企業がリスクを恐れて成熟した既存分野にのみにお金を消費し、新しい分野への先行投資を行ってこなかった結果であろう。また、お金があるのに経済成長が低いことの恐ろしさは、将来、確実に訪れる経済不況に対して危機感が見えにくいことだ。とくに日本の大企業に所属している者にとって、国内に留まるルーチン業務に従事していると、海の向こうで起きているダイナミズムに触れることがない。大型船を信頼して乗船しているような状況なのだろう。その船の行く末に待ち構える嵐を気にしている乗員がどれだけいるのか心配である。


2019.02.20.

+アリババのグローバルなIPポートフォリオと傾向

中国巨大EC企業として知られているアリババによるグローバルな買収劇が注目を集めている。近年、EC事業だけでなく、リアル店舗の展開、物流、フィンテック、クラウドコンピューティング、ビッグデータ活用、ヘルスケア関連など、様々な事業分野で活発にM&A等の投資活動が行われている。「米中欧日に次ぐ経済圏を構築する」というアリババのビジョンの実現には、グローバルな知的財産戦略と研究開発が欠かせない[1]。 図1に、今回の調査対象としたアリババ社のグローバルな特許出願件数を示す。年々、特許件数は伸びており、特にこの5年間の増加が著しい。各国の特許出願件数から見ると、2017年以後の特許公開件数は2016年までの累積特許公開件数に匹敵するほどの伸びである。各国で比較すると、これまでの特許出願件数に占める2017年以降の特許出願件数の比率は韓国で最も高く(81%)、日本で最も少なく(39%)なっている。  本レポートでは、①アリババグループの特許を俯瞰分析し、注力領域を抽出した。②アリババ特許出願のトレンドを俯瞰図上に確認した。③俯瞰分析に基づいて、アリババにおける各国の技術領域を比較した。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールDocRadarを用いた。


2019.02.06.

+任天堂VSコロプラ訴訟:保有特許から明かされる戦力差、コロプラが取れる対抗策とは

ここ数年でゲーム市場は大きく姿を変えてきている。かつては任天堂(7974)、ソニー(6758)、マイクロソフトといった家庭用ゲーム機メーカーが業界を主導し、そのゲーム機に対応したソフトをソフトメーカー各社が販売するというのが主流だった。しかし2012年頃から日本ではスマートフォンが普及し始めたことを契機に、スマホが家庭用ゲーム機から主役の座を奪い去ってしまった。ファミ通ゲーム白書[1]によると2008年に国内ゲーム市場全体の2割程度だったオンラインプラットフォーム(PC、モバイル端末)の規模は、2012年に約5割、2017年には約8割まで成長している。さらにこの10年ほどで国内ゲーム市場全体の規模も倍増している。つまり今、ゲーム市場の主戦場はスマホなのだ。 また、近年はゲーム業界での特許登録件数が急増している。2008年~2012年に公開された件数が2841件に対して、2013年~2017年は5011件とほぼ倍増した。特許の急激な増加に伴い、各社の特許は複雑な抵触関係を形成している。こうした状況は、スマートフォンが登場する前から事業を営み、関連する特許技術を充実させてきた任天堂のような企業に比較的有利で、最近台頭した新興企業にとっては極めて大きなリスクとなっている。 特に最近は任天堂とコロプラ(3668)の訴訟が話題となっている。2017年12月、コロプラの人気ゲーム「白猫プロジェクト」が任天堂の保有する特許を侵害しているとして、任天堂は事業の差止と44億円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした[2]。この訴訟で任天堂の主張が認められれば、コロプラは極めて大きな損害を被ることになる。 本レポートでは、任天堂とコロプラの訴訟を事例として分析することにより、今後同じような状況に立たされる新興企業は訴訟に備えて何をするべきかを明らかにする。具体的には、任天堂とコロプラの保有する特許をVALUENEX俯瞰解析ツールTechRadarの新インターフェース(UI2.0)により分析し、問題になっているとされる特許[2]、任天堂とコロプラの保有特許の位置関係、さらに両社の数的な勢力関係などから、事件が起こったメカニズムと今後コロプラが取るべき打ち手を考察する。


2019.01.23.

+日本国内におけるIoT分野技術動向 ~広域ファセット分類記号ZITからみる日本国内IoTの隆盛~

昨今IoTつまり、Internet of Things(以下IoT)という単語が使われ始め、過去ITが導入されていなかった産業領域にまでウェブの世界が侵食し、IoTによるリアル世界のウェブ化が世の中を席捲している。ハードからソフトへ、モノ売りからコト消費へ、そうした時代の変遷の中に私たちは生きている。今後この分野において特許数としても盛り上がりを見せることが予想される中、特許庁においても2016年11月から、IoT関連技術に関して、横断的な分類である広域ファセット分類記号「ZIT」を新設し、日本の特許文献に対して付与を行うことを決めた。 本レポートでは、上記IoT関連技術に関する日本国公開特許に基づいて、技術動向を紹介するとともに、隆盛を見せている分野の確認、またそこから今後の展望ついても予想をする。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰解析ツールTechRadarを用いた。


2019.01.09.

+ 高精度測位社会を担うRTK測位技術とその展望 ~センチメートルオーダーの測位技術が切り開くビジネス領域 ~

人工衛星からの信号を用いたGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)の測位技術は、ここ20年ほどの間に我々の生活の中で欠かせないものとなった。スマートフォンアプリでの位置情報利用の普及により、GNSSという言葉を聞き慣れていない人であっても、例えばその一種であるアメリカ合衆国の人工衛星測位システム・GPS(Global Positioning System)は誰もが知るところである。日本でも準天頂衛星システム・QZSS(Quasi-Zenith Satellite System, 通称:みちびき)の打上げにより、今後は日本近辺では常にQZSSの衛星が天頂付近を飛ぶことになるため、より高精度かつ安定的な位置情報の利用が期待されている。また、近年研究開発が進んでいる自動運転や作業用ロボット、UAV/ドローンの自動運航に関しても、GNSS測位による位置情報の把握は根幹を成す技術の一つである。 こうした実用面の広がりに伴い、GNSSの測位精度も向上してきた。単独測位(一つの受信機が複数の衛星からの距離を計算することによって自身の位置情報を把握する手法)に加えて、現在主流となっているのはDGNSS/DGPSというものである。これは、GPSをはじめとする人工衛星からの電波受信に加えて、地上に固定された基準局からの情報を参照することで位置情報を補正する手法で、これにより誤差1 ~ 2m程度までの測位精度を実現している。一方、自動運転等での利用にあたっては、誤差1mの精度では決して十分とは言えず、より高精度かつ即時的な位置の把握が求められる。そうした中で注目されているのがRTK(Real-time Kinematic)と呼ばれる測位技術である。 RTK測位はユーザー(移動体)側の受信機と、基準局と呼ばれる固定受信機の双方で人工衛星からの電波を受信する。そして、その電波から得られる情報(搬送波位相)を元にそれぞれの位置を計算し、基準局の位置情報及び位置補正情報を移動体側の受信機で受信・計算することで、正確な位置を移動体側で補足し続ける技術である。地上に固定された基準局からの情報を参照するという点はDGNSSと同様だが、搬送波位相から正確な位置を割り出すといった点が特徴である。詳細は割愛するが、これにより誤差数 センチメートルの測位精度が実現可能となり、既に実証もされている。ただし、従来のGNSS受信機では基本的には対応できないこと、そして基準局の設置位置が離れるほど精度が劣化することや、コスト面やデバイスの小型化に向けた課題もあり、汎用的な普及にはもう少し時間がかかるとみられる。 本レポートでは、このRTK測位に関する特許情報を広く分析することで、その技術開発の現況と、応用展開先及び今後の展開について予測を行うものである。


2018.12.12.

+ レンタル・シェアリングビジネスに関する技術動向

パーク 24(4666)がマツダレンタカーを買収し、カーシェアリングビジネスに参入して以降、様々な企業が 同事業に参入している。自動車を借りる、という意味ではレンタカーと同様だが、短時間での利用を想定する事 でちょっとした買い物の足として利用する等、新たな交通の足として利用が進んでいる。近年は都市部において 自転車のシェアリングが実験的に行われている等、従来見られなかったレンタル・シェアリングビジネスが現れ ている。一方で、レンタル・シェアリングは移動体に限ったビジネスではなく、CD・DVD 等はセルビジネスと 並んでレンタルを利用する人も多い。そこで、本稿では様々なレンタル・シェアリングビジネスに関する技術開 発動向を分析する事で、どのような状況にあるのかを分析することを試みた。


2018.11.28.

+ 海洋汚染で脚光を浴びるか生分解性プラスチック

最近、海洋でのプラスチック廃棄物に関する問題が大きな話題となっている。世界で生産されるプラスチック製品が増加し、それが投棄されることによって微粉化し、いわゆるマイクロプラスチックと呼ばれるものになる。プラスチックは化学的に安定であり、安価かつ加工性にすぐれるため、現代社会ではなくてはならない素材となっている。しかしこの化学的に安定という性質が裏目に出て、長期にわたり海域等に存在することになる。このマイクロプラスチックは海洋生態系にとって脅威になる可能性があるばかりでなく、近年では市販されている食塩から検出されるなど、その影響は人間にも及ぶ可能性を秘めている。 プラスチックによる汚染に対する一つの解は自然界でプラスチックが分解されることである。このような材料は生分解性プラスチックとして1980年代から研究開発が進められてきている。2017年には世界での生産量が90万トンに上り、今後も増加するとの予測もあるが、海洋汚染問題が大きく取り上げられるようになった今、さらに注目を集める可能性もある。そこでプラスチックによる海洋汚染が問題になっている今、生分解性プラスチックの技術開発動向およびプレイヤーに着目した。


2018.11.14.

+ 生物に学ぶイノベーション バイオミメティクスの技術動向分析

バイオミメティクスとは、生物の機能・構造を模倣して、工学技術に応用する分野であり、近年の顕微鏡技術や微細加工技術の発展により、多くの他分野への応用が期待される分野として注目を集めている。20世紀のバイオミメティクス研究はカワセミのくちばし形状を採用した500系新幹線や、ミツバチのハニカム構造など、自然界に存在する目で見えるスケールやミリスケールでの形状・機構・機能を人工的に模倣することが基本であった。しかし、電子顕微鏡による観察が一般的となり、ナノテクノロジーと融合することによって21世紀のバイオミメティクス技術はより複雑で微細な形状を模倣し、実際に加工技術によって再現することができるようになった。これらのマイクロ・ナノスケールにおけるバイオミメティクスの応用は、人間の眼には不可視の領域であるが、製品や技術に対して大きな付加価値を与えることが期待できる。また、医療分野への応用においては、自然に形成された細胞組織と人工物の境界を曖昧にし、人体組織に負荷のかからない再生医療技術や治療技術を実現することが期待される。現在バイオミメティクス分野の研究は大学・研究所を中心に行われているが、製品に与える付加価値の高さ、ナノテクノロジーの発展を背景に企業も参画することで、非常に潤沢な研究資源とテーマを抱える分野となる可能性が高い。  そこで本レポートでは、VALUENEX株式会社が提供するTechRadar Visionを用いて、米国公開特許公報データをもとに、バイオミメティクス関連の技術動向およびプレイヤーの分析を行った。


2018.10.31.

+ 進む少子高齢化、どうなるおむつ業界

 日本の総人口は2017年10月時点で1億2,671万人となっており、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%となった。これは増加の一途を辿っており、2025年には高齢化率は30%を超えることが予想されている[1]。こうした人口構造の変化は乳幼児や高齢者を対象とするおむつ市場においても影響を与えており、2011年には出荷額ベースの市場規模において大人用が乳幼児用を上回ったとの報告もなされている[2]。こうした流れを受けて、各社の大人用市場における動きも活発化しつつある。例えば生理用品、紙おむつなどの衛生用品の大手メーカーであるユニ・チャーム(8113)では、2016年に紙おむつの「ライフリー」の宣伝活動として認知症予防のウォーキングイベントを開催したほか、2018年に同社の高原社長は大人用紙おむつの分野に、高付加価値の新製品の投入を加速する考えを明らかにしている[3]。  しかし、減少の続く出生数の中でも乳幼児用おむつにおいて活路を見出す企業も存在する。米国に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーの日本子会社プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンでは少子化や共働き家庭の増加による可処分所得の増加などを独自のデータ分析マーケティングから明らかにし、パンパースから高価格帯製品である「肌へのいちばん」シリーズをアップグレード、売上増を実現した[4]。  一方で、商品の提供先は日本人や国内だけではない。中国人による「爆買い」はおむつ製品にも波及しており、花王の販売する商品「メリーズ」は2014年頃から中国での人気が高騰、中国人個人転売業者を筆頭にメリーズを買い占めドラッグストアなどの店頭から商品が姿を消す事態が日本各地で見られた。2009年より花王(4452)は中国への輸出や現地生産を進めており、その当時4.1%だった花王の中国におけるシェアは2015年には9.0%にまで伸びている[5]。  今後も少子高齢化していく日本の人口を前に、各企業のとる戦略はざまざまである。本レポートでは、人口構造の変化に対しておむつ市場の各企業がどういった開発戦略を実施しているかを技術的な側面から明らかにすること、及び今後のおむつに関するトレンドを予測するために、特許情報に基づく俯瞰解析を試みた。分析には当社が提供するテキストマイニング俯瞰解析ツールDocRadarを使用した。


2018.10.17.

+ 世界トップの光学技術を先端医療機器の領域へ ~日本勢光学系精密機械メーカーの医療機器用光学技術開発動向~

 かつてから世界トップレベルの光学技術をもとにデジタルカメラやビデオカメラ市場で長年世界トップの市場シェアを占めている日本の光学系精密機器メーカーは、自社保有の光学技術を応用して医療機器分野にも参入している一方、同分野の技術開発以外にも関連企業との戦略的M&Aの締結や関連事業部門への投資などを通じてその市場影響力を拡大している。 本レポートでは、そのような精密医療機器に関わる光学技術の開発動向を日本国公開特許に基づいて紹介するとともに、関連市場の主要メーカーについても議論する。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールTechRadarを用いた。


2018.09.19.

+ USトップ10中3社がベンチャー、バイオリアクター開発動向

 バイオリアクター技術は、生体触媒など生物の力を借りて、目的の物質を生成する。通常の化学触媒反応のような高温・高圧などの条件が不要で、反応速度がより速い特徴がある。更には、副生成物が少ない、工程が少ないなどの優れた特徴を有し、最近開発が活発化している。あとで紹介するように、米国公開特許件数ランキングで上位10社中、ベンチャーが3社という活況ぶりである。 本レポートでは、このバイオリアクターの技術について、世界の縮図として、米国における最近の動向を調査すべく、米国で公開された特許公報を元に分析を行った。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールTechRadarを用いた。


2018.09.05.

+ 日本国内の鉄道事業者の鉄道技術動向

 新興国を始め、世界での鉄道システムの需要が高まっている。2019~2021年平均の市場規模は約24兆円とも言われ、アジア、西欧、北米を中心に成長基調にある[1]。他方、日本国内に向けてみると、人口減少といった構造的な要因により、大幅な需要の増加は見込みにくい[1]。そのため、国内の鉄道関連のメーカーは海外展開に取り組んでおり、日立製作所が受注したロンドンでの都市間高速鉄道プロジェクト、川崎重工業の米ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車の受注といった事例が有名である。JRを始めとする鉄道事業者においては、運行管理や保守メンテナンス等の技術支援、コンサルティングに取り組んでいる[2]。
日本勢は、運行ダイヤの正確性や高い安全性さらには技術力を武器に、海外進出を企図しているが、コスト競争力に強みを有する中国企業を相手に、海外鉄道関連案件の受注を失することもある。将来的には、技術力に関しても、中国企業に並ばれることも想定される。 今回の解析レポートにおいては、日本の鉄道技術を紐解くことを企図に、国内の鉄道事業者にフォーカスし、技術俯瞰を行った。 なお、本稿においては、下記の主要鉄道事業者を解析対象として取り扱っている。
<JR系:8企業> 北海道旅客鉄道、東日本旅客鉄道(9020)、東海旅客鉄道(9022)、西日本旅客鉄道(9021)、四国旅客鉄道、九州旅客鉄道(9142)、日本貨物鉄道、鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)
<大手私鉄系:16企業> 東武鉄道(9001)、京成電鉄(9009)、西武鉄道(西武ホールディングス(9024)の子会社)、京王電鉄(9008)、小田急電鉄(9007)、東京急行電鉄(9005)、京浜急行電鉄(9006)、東京地下鉄、相模鉄道(相鉄ホールディングス(9003)の子会社)、名古屋鉄道(9048)、近畿日本鉄道(近鉄グループホールディングス(9041)の子会社)、京阪電気鉄道(京阪ホールディングス(9045)の子会社)、阪急電鉄(阪急阪神ホールディングス(9042)の子会社)、阪神電気鉄道(阪急阪神ホールディングス(9042)の子会社)、南海電気鉄道(9044)、西日本鉄道(9031)


2018.08.22.

+ 水素の化学的製造に係る技術とプレイヤー ー水素発生・脱水素反応ー

 2017 年12 月、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(経済産業省)によって水素基本戦略が策定された。 この戦略は、ガソリンや液化天然ガスなどの従来一次エネルギーと同程度の水素コストの実現およびそれに向け た水素の生産から利用までの政策群を統合したものである。シナリオとして、2030 年までに国際水素サプライチ ェーン構築や国内再生可能エネルギーに由来する水素製造技術の確立を行い、生産量を 30 万トン(現状0.02 万 トン)、コストを30円/Nm3(現状 100円/Nm3)などにし、さらにその先には 1000 万トンの生産や 20円/Nm3 のコストなどが見込まれている。水素に係る政策は海外でも活発に進められており、中国では2016年4月にエネ ルギー技術革命イノベーション行動計画が発表され、重点分野の一つに水素・燃料電池が取り上げられている。ま た米国では 2004 年から Hydrogen Fuel Initiative が、欧州では 2008 年から Fuel Cell and Hydrogen Joint Undertakingが立ち上げられている。 今後さらに注目が高まることが予想される水素エネルギーであるが、その中でもとくに水素製造はキーとなる 技術になると考えられる。水素製造に関しては、電気化学的な手法や光触媒を利用した方法、あるいは化学反応を 利用した手法など、様々なアプローチがあるが、ここでは化学的アプローチとして水素生成(発生)反応および脱水素反応に焦点を当ててその技術開発動向およびプレイヤーを明らかにした。


2018.07.25.

+ 成長市場と共にあったアップル、スマートフォン市場の停滞で今後はどうなるか

アップルがこれまでに出した新製品は大きな成長市場の創出につながっている。音楽プレーヤーのiPodやオンライン音楽配信のiTunes、スマートフォン及びアプリのiPhone、タブレット型端末のiPadなど枚挙に暇がない。実際に、アップルが2007年に初代iPhoneをリリースして以降、世界のスマートフォン出荷台数は2007年に1.1億台だったものが、2011年に4.9億台、2015年に13.8億台 [1]と急増した。最近の事例だと2016年にヘッドホン端子のないiPhone7とBluetooth対応イヤホンのAirPodsをリリースしたことによる、ワイヤレスヘッドホン市場の創出が挙げられる。米国では2017年1月から7月までで90万台以上のワイヤレスヘッドホンが販売されており、その期間の全ワイヤレスヘッドホン売上の85%をAirPodsが占めている[2]。今後ヘッドホン端子のないスマートフォンの増加やBluetoothやバッテリーなど関連技術の成長を受けて、他プレーヤーの参入など、ワイヤレスヘッドホン市場の活発化および拡大が予測される。アップルは、まだ技術が成熟していない新市場の初期に完成度の高い製品を投入、瞬く間に高いシェアを握るとともに市場を拡大させてきた。さらに、こうした新市場の創出を原動力としてアップルは成長を持続させてきた。
 一方で最近発表された米調査会社IDCの調査結果によると、スマートフォンの全世界出荷台数は2017年に前年比で0.5%減少[3]したことから、市場が衰退へと転じたことが窺える。今後はiPhoneから得られる莫大な利益に頼って成長を持続するのは困難を増していくと予測される。
 本レポートでは、これまでアップルが新製品の成長市場をいくつも創出し、それを成長の源としてきたことを踏まえ、アップルの今後を予測する。具体的には、アップルの特許出願をVALUENEX俯瞰解析ツールTechRadarの新インターフェース(UI2.0)により分析し、同社の注力技術の変遷を振り返りつつ、最新の注力技術を明らかにし、アップルが今後どのような新製品を繰り出し得るのか、あるいは未だ見えてこないのかを考察する。


2018.07.11.

+ 水害に関連した技術動向

 7月に入り、西日本を襲った大雨はこれまでの常識では考えられないほどの大きな被害をもたらした。死者は本稿執筆時点で100名を超え、今後も増え続ける可能性がある。これまでであれば特定の地域や河川流域にて発生していたものが、広島、岡山、愛媛等複数の府県にまたがっており、広範囲に被害が及んでいる。
 自然災害を完全に防ぐことは難しい。一方で、水害を防ぐための技術開発も行われている。そこで、今回は水害に関連した技術開発の動向を探る事とした。


2018.06.27.

+ 製薬・ヘルスケア業界における近年の技術ポートフォリオと投資傾向

武田薬品によるシャイアー買収の動きが注目を集めているが、近年、製薬業界では活発に M&A 等の投資活動 が行われている。その背景には、新薬創出がますます難しくなってきたことがあり、巨額の時間と費用をかけて も、商品化に結び付く成功確率は約3万分の1とも言われ、非常にリスクが高いことが挙げられる。各社は有望な 新規技術やパイプラインといった新薬候補を求めて、投資や買収の規模を拡大させている[1]。 図1 に、今回の調査対象とした5 社(Celgene、GlaxoSmithKline、Pfizer、Boehringer Ingelheim、Novartis) の投資回数と投資額を示す。なお、本レポートでは「投資」と「買収」を区別して表記しており、以下では「投資」 と称する場合には「買収」を含まない。年々、投資回数は伸びており、特にこの5 年間の増加が著しい。5 社の中 でも傾向に違いが見られるが、今回は投資回数の最も多いCelgene 社と、最も少ないBoehringer Ingelheim(BI) 社を分析の対象とする。
本レポートでは、①5 社(Celgene、GlaxoSmithKline、Pfizer、Boehringer Ingelheim、Novartis)の特許及 び投資先の特許を俯瞰分析し、注力領域を抽出した。②5 社の金額ごとの投資領域を俯瞰分析し、投資トレンドを 分析した。③俯瞰分析に基づいて、Celgene 社とBoehringer Ingelheim 社の投資する技術領域を比較した。④分 析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールDocRadar を用いた。


2018.06.20.

+ 自動運転車の鍵を握るLIDARの応用展開先

 自動運転の要となる画像認識技術、その情報を生成するデバイスがLIDAR だ。LIDAR とは、Light と Radar の合成語である。オリジナルの概念は1930 年代から存在している。高精細Mapping が可能であり、航 空分野では30cm 単位で三次元マッピングが実現している。LIDAR の開発や利用するサービスに取り組む企業 数は、特許出願企業数と照らして年々増加しており、かつてのエレクトロニクス業界の常であるように、 LIDAR も量産化され、標準化がなされると、価格が抑えられてコモディティー化してゆく部品の1つになるも のと考えられる。LIDAR 技術の開発はどのような課題があり、主要企業であるGoogle の強みと弱みの技術が何 であり、どのような応用展開先があるのかを俯瞰解析を通じて明らかにした。


 
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