分析レポート

VALUENEXの解析ツールを使って、当社が独自に分析している様々なレポートをお届けします。ぜひご活用ください。

 

2019.09.11.

+株式売却準備が進められる日立化成 国内化学系企業との技術シナジーの可能性

かねてからグループ内の再編を加速させている日立製作所(6501)が、上場子会社である日立化成(4217)の売却を検討し、2019年8月9日には売却のための一次入札が行われた。現在、国内外の投資ファンドや、化学系企業などが買収先として噂されており、どの企業が最終的に日立化成を買収するのか注目を集めている。 今回は日立化成および三菱ケミカルホールディングス(4188)、三井化学(4183)、日東電工(6988)、カネカ、(4118)信越化学(4063)、住友ベークライト(4203)、JSR(4185)らの公開特許を収集し、日立化成と国内化学メーカーとの技術シナジーの可能性について特許俯瞰ツールTechRadarを用いて解析を行っていく。


2019.08.28.

+市場拡大を続ける機能性表示食品の届出動向と王者ファンケルと組むキリン

機能性表示食品の市場拡大が止まらない。富士経済の調査[1]によると、2015年の制度発足から4年となる2018年は前年比23.7%増となる2,420億円の市場規模となっており、2019年も更に拡大すると予想されている。市場拡大の背景には、健康志向の高まる消費者が新たな機能性訴求を受け入れ始めたことや、既存の大型ブランドにおいて機能性表示食品への転換が進んだことが挙げられている[1]。更に、同じ健康食品の中でも先行して登場した特定保健用食品が国の審査を必要としていることから、開発費を抑えられる機能性表示食品へシフトしたことも指摘されている[2]。


2019.08.14.

+パーソナルゲノムの時代 遺伝子解析の技術トレンド

「パーソナルゲノム」といった言葉で遺伝子研究が語られるようになって久しい。遺伝子情報は個人が解析結果を持ち歩き、病気の診断やQoL(Quality of Life:生活の質)の向上に役立てよう、という考えだ。これには、遺伝子解析技術の発達により、これまで以上に速く・低コストで遺伝子情報が解析できるようになるという前提がある。そのための技術の一つとして、例えば「次世代シーケンサー」と言われる技術・プロダクトがあり、こうした手法及びデバイスの発展により、遺伝子解析に必要となるリソース(試料・時間等)の量は飛躍的に改善されてきた。 近年までは遺伝子解析と言えば研究目的での利用に留まっていた感はあるが、それらの技術が「パーソナル化」されて我々の日常生活に浸透するにあたって、現在はまさに分水嶺と言える時期である。2020年を翌年に控えたいま、遺伝子解析技術はどこまで進んでいるのか。本レポートでは、関連する特許情報に基づきビッグデータの可視化を行うことで、遺伝子解析技術のこれまでの変遷と現在の立ち位置を明らかにする。


2019.07.31.

+成長する航空機産業から商機を探る

2020年には大きな出来事として東京オリンピックの開催を控えているが、この年は日本の航空機産業にとっても大きな節目の年となりそうである。これまで長い間ジェット旅客機の完成機を手掛けていなかった日本の航空機産業であったが、三菱重工業(7011)傘下の三菱航空機は2020年半ばにスペースジェット(旧称MRJ)初号機を納入する方針で計画を進めており、これが完了すれば1964年のYS11から56年振りの日本メーカーによるジェット旅客機となる。 航空機産業は現在世界的にも成長が期待されており、2019年の経済産業省の報告によれば世界の民間航空機市場は年率約5%で成長していき、今後20年間の市場規模は5~6兆ドル程度となる見通しといわれている。また、日本における国内生産額は2030年には3兆円を超えるといわれている。 しかし、日本航空宇宙工業会の調査によれば平成29年度の主要機械工業の国内生産額約75兆円に対して、航空機生産額は約1.7兆円となっており、国内の製造品における割合は2%ほどに留まっている。この背景には、これまで航空機産業の成長をけん引してきた重工業大手のエンジンや機体の国際共同開発への参加がある一方で、航空機価格の4割を占めると言われている装備品について、航空機生産額の1割に留まっていることがあげられる。航空機に関連する国内生産額を増やしていくことは輸入超過となっている航空機産業から輸出を促進する経済的なメリットに加え、新しい産業が興ることでの雇用の促進、各企業へ技術的な革新を促すことなどにも繋がる。 成長著しい航空機産業への参入を検討するためには、近年の産業動向を見据えて様々な分野から有力な候補を絞り込んでいく必要がある。その一方で装備品を始め航空機に利用される部品は多岐に渡り、機体サイズにもよるがボーイング747の場合では同社HPにおいて600万点とも言われており、それら全分野の中から真に有望な分野を絞り込む事は困難を要する。 そこで本レポートではジェット旅客機を中心としつつ、航空機産業について装備品に関連のある特許情報を広く収集し、装備品に関する主要な技術分野を把握した上で将来有望となり得る近年の注目分野の抽出を行った。


2019.07.17.

+「感情計測」から「感情制御」へ ‐新たな時代へと進む心理学‐

今、「心理学」が改めて注目されている。2017年には行動経済学者のRichard H. Thalerがノーベル経済学賞を受賞した。日本国内でも2016年頃からのアドラー心理学の流行や、公的な動きとして2017年に公認心理師法が施行されるなど注目度は高い。民間企業においても各種メーカー、特に自動車メーカーなどを中心に製品開発に積極的に心理学的知見を取り入れ始めている。 一口に心理学的知見といっても生理指標から社会的な総合作用に関するものまで様々なものがあるが、最も重要なものは何であろうか。本レポートでは「感情」に注目する。先に挙げた行動経済学は経済における感情の重要性を明らかにした。従来の経済学ではホモ・エコノミクス(Homo Economicus)と呼ばれる常に経済的合理性に基づいて判断する人間を前提としてモデルが作成されてきた。しかし、数々の実験によりしばしば人間が非合理的な判断を下すことが示されてきた。代表的な例としては最後通牒ゲームが挙げられる。このゲーム(というほど楽しいものではないが)では、ある2人組に一定金額の報酬が与えられる。その報酬に対して分配者(A)は自分と相手(B)の取り分の分配額を提案し、BはAの提案を受け入れるか、拒否するかを選択する。BがAの提案を受け入れると、両者ともそれぞれの分配額を得ることができるが、BがAの提案した金額を拒否した場合には2人とも何も受け取ることができない。例えば1万円を報酬として受け取った場合、Aにとって最も合理的な選択は1円のみをBに分配することであり、Bにとっては分配金額がいくらであろうと提案を受け入れることが合理的な選択となる(何も受け取れないよりはマシであるため)。したがって、Aにとっては1円という最小金額以外を提示する合理的な理由はない。しかし、実際には50%以上のケースでAは半額を分配する提案を行う。Aは極端に低い金額を提示することでBの気分(感情)を害してしまい、提案を拒否されることを恐れて非合理的な提案をしてしまうのである。 このように、感情が人間の行動に影響を及ぼす例は枚挙にいとまがない。心理学が、人間を人間たらしめているものを探求する学問であるとするならば、感情が人間を理解する上で非常に重要な要因となるのは間違いない。本レポートでは、感情に関連した技術の動向を俯瞰することで、心理学が向かう未来についての示唆を得ることを目的とする。なお、本レポートでは感情を、「人間が何らかの対象に対して抱く気持ち」および「解が1つに定まる合理的な判断以外の判断を引き起こす心理的要因」と定義する。


2019.07.03.

+経営統合するトヨタホームとパナソニックホームズの技術シナジー

2019年5月、トヨタホーム(非上場)およびトヨタホームが筆頭株主であるミサワホーム(1722)とパナソニックホームズ(非上場)およびパナソニック傘下の松村組とパナソニック建設エンジニアリングの5社が経営統合し、2020年1月からプライム・ライフ・テクノロジーズという新会社を立ち上げることを発表した。その背景には今後確実に訪れる人口減少による市場縮小での生き残りだけでなく、移動サービスを含めた街づくり事業の強化が狙いであるとされている。国内の大手住宅メーカの総販売戸数(2017年)を見ると、トヨタホーム、パナソニックホームズ、ミサワホームの3社は上位にランキングされているものの、大和ハウスと積水ハウスの2強には及ばない。ただしこれはアパートやマンションを含むもので、戸建てのみに着目すると業界トップクラスになり、マーケット的には優位性が出るものと考えられる。一方で、これらの企業が経営統合することで、技術的にはどのようなシナジー効果が得られるのであろうか。 そこで、今回経営統合が発表された5社の技術ポートフォリオについて、2001年以降に公開された日本国公開特許公報をもとに分析を試みた。なお、トヨタホームは2003年にトヨタ自動車から分社化されたため、それ以降に出願あるいは2003年以前に出願され権利がトヨタホームに移譲されたものが対象となっている。


2019.06.19.

+はやぶさ2の成功に続くか?日本の宇宙開発

最近、日本の人工衛星「はやぶさ2」による小惑星「リュウグウ」への着陸と岩石サンプル取得成功との報道があった。2010年の「はやぶさ」による「イトカワ」への着陸に続いての宇宙航空研究開発機構(JAXA)による成果である。またインターステラテクノロジズ株式会社による国内民間企業初の観測ロケットMOMO3号機の打ち上げ成功など、日本国内での近年の宇宙開発に、活発さを感じる。 一方、世界に目を移すと、2017年にイーロンマスク率いる米国スペースX社による再利用ロケット「ファルコン9」の第1段機体の世界初の着陸成功のニュースがあった。また2019年に中国の無人探査機「嫦娥4号」による世界で初めての月の裏側への着陸など日本の遥か先を行く成功が続いている。 そこで、本レポートでは今後の日本における「はやぶさ2」に続く宇宙開発動向を調査すべく、日本国内における宇宙開発関連特許の公開公報を基に分析を行った。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールTechRadarを用いた。


2019.06.05.

+共同出願および引用情報を用いた大学発技術の活用に関する分析

大学や公的研究機関、あるいは民間企業が研究開発・技術開発を行った成果は、特許や論文として公開されることが一般的である。そのなかでも複数組織が共同で行った技術開発は、共同執筆(特許の場合は共同出願)という形をとることが多い。また、有用な研究・開発成果は他の企業・大学が研究・技術開発を行う際に、先行する研究・技術として引用される。このため、各種特許や論文の共同執筆や引用を把握する事で、どのような研究・技術が活用されているのかの一端を把握することが可能になると考えられる。 そこで、本稿では、特に大学による研究・技術開発の活用状況について、特許の共同出願状況や発明者引用情報(以下、単に引用情報とする)を用いた解析を試みた。


2019.05.22.

+日本の橋が落ちる!国内73万の道路橋をどうやって点検するか。

沈下橋で有名な、高知県四万十市の岩間大橋に破損が見つかり、通行止めになったのが2017年11月のこと。四万十市は、他の8つの沈下橋の緊急点検を実施し、支障が確認された他の2つの橋について通行制限や通行止めの措置を行った。そして、岩間大橋の通行止めは現在も続いている。 国内のインフラの多くは、1960年代から80年代の高度経済成長期に整備された。道路橋を例にとると、長さ2m以上の道路橋約73万橋のうち、建設後50年以上を経過するものは、2018年3月時点で約12万橋(このほか約23万橋が建設年度不明)であり、その数は年々増加している(図1)。岩間大橋も、建設から51年が経過していた。 老朽化したインフラ設備のメンテナンスが今後深刻な問題となることはかねてから指摘されていたが、5年に1度の定期点検を義務付けるように道路法改正がなされたのは、中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故が起こった2012年の翌年のことであった。この定期点検は「近接目視」(土木技術者等による現地での点検)が基本であり、さらに橋によっては足場が必要となるため、管理主体にとって大きな負担となっている。その道路橋の管理主体はほとんどが地方自治体であり、市区町村の管理する橋は66万に及ぶ。


2019.05.08.

+下町ロケットの再現:AgriTech(アグリテック)が進む日本農業

昨年、TBSで放送されていた大ヒットドラマ『下町ロケット』は記憶に新しい。新年にもSPドラマが放送され、目にした方も多かったのではないだろうか。かくいう著者もその中の一人である。今回のシーズンでは農業がフォーカスされており、「日本農業を救いたい」「おいしいお米を消費者に届けたい」という信念のもと、無人トラクタの開発・販売に向け様々な壁を乗り越えて行く姿に涙を誘われた視聴者は多かったであろう。 かつて、日本にとって欠かすことのできなかった農業であるが、現在は少子高齢化の余波を受け、危機的状況に陥っている。農林水産省によると、2018年の農業就業人口は175.3万人(前年比:96.5%)と 1995年の半数以下であり、65歳以上の占める割合は68.4%(120.0万人)に上る(図1)。日本の農業は深刻な労働力不足とそれに伴う技術継承の難しさに直面しているのだ。つまり、ドラマの中だけでなく、現実世界でも農業の高齢化は深刻な問題なのである。しかし、こうした危機的状況を解決する手段として注目が集まっている取り組みがある。アグリテックだ [1] 。アグリテックとは「農業」を意味する「Agriculture」と「技術」を意味する「Technology」を組み合わせた造語であり、AIやIoTといった科学技術を農業に活用し、作業の効率化やシステム化を行うことを意味する[2]。ドローンによるセンシング技術や、農薬・肥料といった供給物の情報を取得し収穫量を管理する技術、そして『下町ロケット』で活躍した無人トラクタもアグリテックである。近年、米国や中国でも注目されている、まさに最先端の農業といえよう。 そこで、本書では、このアグリテックの技術領域の中にはどういったプレーヤーが存在し、そのプレーヤーごとにどのような特色があるのか、そしてアグリテックの技術領域に新規参入している企業の特許を紐解くことで、今後どのような企業がアグリテックに関わってくるのかを考察する。


2019.04.17.

+ブロックチェーンが描く未来とは

仮想通貨バブルに沸いた2017年から一転し、2018年は仮想通貨バブル「崩壊」の年となった。代表的な仮想通貨であるビットコインは1年間で70%以上値を下げ、投機対象としての価値を大きく下げた[1]。  その一方で、仮想通貨のコア技術であるブロックチェーンに関する技術開発は勢いを失っていない。ブロックチェーン関連の特許は年々増加しており、実用、実証例も仮想通貨を中心とする金融業界にとどまらず、様々な用途に使われ始めている。例えば、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングは2018年にブロックチェーンを利用してワインの生産から販売までを管理する「ワイン・ブロックチェーン」の実証実験を開始している[2]。  本レポートではブロックチェーン関連特許の近年動向を俯瞰解析することで、今後ブロックチェーン技術が向かっていく方向性、その応用可能性について有用な示唆を得ることを目的とする。


2019.04.03.

+250兆円市場「空飛ぶクルマ」の覇者は誰か?

自動車業界がにわかに騒がしい。2018年10月、トヨタ自動車(7203)とソフトバンク(9984)が新会社を設立し、次世代MaaS (Mobility as a Service)の普及を宣言したのは記憶に新しい。それだけではなく、エリア限定の完全自動運転(レベル4)に向けた実証試験が着々と行われている。また、電動自動車についても、国外に比べると出遅れた感はあるが、確実に電動化へと向かっている。  2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーAG・CEOのディエター・チェッチェ氏が上記の動きを予見し、「CASE」と表現したことがいよいよ現実になりつつある。 「CASE」の定義をもう一度確認しておくと、Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェア&サービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとったキーワードである。  しかし、この4つの流れに加えて、SFの話ではなく、「空飛ぶクルマ」すなわち、Sky carの「S」が加わり、「CASES」になろうとしている。「空飛ぶクルマ」の市場は世界で250兆円 とも言われ、参入を表明する企業は日々増えており、ボーイングやアストンマーチンなどの航空機メーカ やドローンメーカの参入が本格化しつつある。その流れを受けて、政府も「空の移動革命に向けたロードマップ(案)」を2018年12月に作成し、民間の実証試験と合わせて、制度や体制の整備の準備を始めている。ロードマップ(案)によれば、「空飛ぶクルマ」は2023年を事業スタートの目標としており、4年後には「空飛ぶクルマ」を見ることが珍しくない世の中になっているのである。  こうした大きな変化がある中で、「空飛ぶクルマ」という名前から自動車メーカがそのまま、空を制することができるかと言えば、そうはならない可能性がある。本レポートでは技術の側面から、新たなる空の覇者の可能性を検証する。なお、「空飛ぶ車」と表記している記事や文書もあるが、本レポートでは「空飛ぶクルマ」と表現している。


2019.03.20.

+オリンピック種目に追加されたサーフィンの関連技術分析からみえてきたこと

2016年8月、リオデジャネイロで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年の東京オリンピックでサーフィンが初めてオリンピック競技になることが承認された。さらに今年2月、2024年のパリオリンピックでも追加種目候補となり、サーフィン競技は一躍注目を浴びている。  国内ではややマイナーなイメージがあるサーフィンであるが、世界では、米国やヨーロッパなどを中心に参加人口は以前から拡大基調にあり、世界の参加人口は3500万人とも4000万人ともいわれている(それゆえ、オリンピックにも採用されたといえよう)。国内でも、近年参加人口の低迷が危惧されていたものの、オリンピック種目採用後、2018年8月都内に人工サーフィン施設『Citywave Tokyo』がオープンし、千葉県でも大規模な人工サーフィン施設が計画中であるなど、サーフィン参加人口拡大への期待が高まっている。 ここで、サーフィンの道具に目を転じてみると、残念ながら、参加人口の多い米豪の海外勢ブランドが主流となっているのが実情である。スポーツ用品は作りこみが必要な製品であり、中でもサーフボードは、ライダーのレベルや体格等の他、使用する自然状況なども加味する必要があるため、カスタマイズがより重要となってくる。すり合わせを得意とし、モノづくりに軸足をおく日本での技術開発はどうなっているのであろうか。 本レポートでは、サーフィンに関連する技術開発動向を、特許情報に基づき概観し、オリンピックへの採用を契機に期待される技術の動きについて紹介する。 なお、分析にはVALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰解析ツールTechRadarを用いた。


2019.03.06.

+GAFAの隙間をつく

日本のGDPは4,949(10億ドル) で世界第三位、富裕者層の数も約300万人 であり、やはり世界第三位である(図1)。それにもかかわらず、世界の成長率ランキングでは、ワースト7に入っている。低成長の国には、ジンバブエ、ギニア、ガボン、パプアニューギニア、コンゴ、ハイチ、コートジボワール、ジャマイカ、北朝鮮のような、そもそもお金がないために経済が成長しない国々が並んでいる(図2)。この中に日本が入ることは、もはや先進国ではないのではないかと思えてくる。統計上は富裕国であるにもかかわらず、経済が発展しないのは、この20年間、企業がリスクを恐れて成熟した既存分野にのみにお金を消費し、新しい分野への先行投資を行ってこなかった結果であろう。また、お金があるのに経済成長が低いことの恐ろしさは、将来、確実に訪れる経済不況に対して危機感が見えにくいことだ。とくに日本の大企業に所属している者にとって、国内に留まるルーチン業務に従事していると、海の向こうで起きているダイナミズムに触れることがない。大型船を信頼して乗船しているような状況なのだろう。その船の行く末に待ち構える嵐を気にしている乗員がどれだけいるのか心配である。


2019.02.20.

+アリババのグローバルなIPポートフォリオと傾向

中国巨大EC企業として知られているアリババによるグローバルな買収劇が注目を集めている。近年、EC事業だけでなく、リアル店舗の展開、物流、フィンテック、クラウドコンピューティング、ビッグデータ活用、ヘルスケア関連など、様々な事業分野で活発にM&A等の投資活動が行われている。「米中欧日に次ぐ経済圏を構築する」というアリババのビジョンの実現には、グローバルな知的財産戦略と研究開発が欠かせない[1]。 図1に、今回の調査対象としたアリババ社のグローバルな特許出願件数を示す。年々、特許件数は伸びており、特にこの5年間の増加が著しい。各国の特許出願件数から見ると、2017年以後の特許公開件数は2016年までの累積特許公開件数に匹敵するほどの伸びである。各国で比較すると、これまでの特許出願件数に占める2017年以降の特許出願件数の比率は韓国で最も高く(81%)、日本で最も少なく(39%)なっている。


2019.02.06.

+任天堂VSコロプラ訴訟:保有特許から明かされる戦力差、コロプラが取れる対抗策とは

ここ数年でゲーム市場は大きく姿を変えてきている。かつては任天堂(7974)、ソニー(6758)、マイクロソフトといった家庭用ゲーム機メーカーが業界を主導し、そのゲーム機に対応したソフトをソフトメーカー各社が販売するというのが主流だった。しかし2012年頃から日本ではスマートフォンが普及し始めたことを契機に、スマホが家庭用ゲーム機から主役の座を奪い去ってしまった。ファミ通ゲーム白書[1]によると2008年に国内ゲーム市場全体の2割程度だったオンラインプラットフォーム(PC、モバイル端末)の規模は、2012年に約5割、2017年には約8割まで成長している。さらにこの10年ほどで国内ゲーム市場全体の規模も倍増している。つまり今、ゲーム市場の主戦場はスマホなのだ。 また、近年はゲーム業界での特許登録件数が急増している。2008年~2012年に公開された件数が2841件に対して、2013年~2017年は5011件とほぼ倍増した。特許の急激な増加に伴い、各社の特許は複雑な抵触関係を形成している。こうした状況は、スマートフォンが登場する前から事業を営み、関連する特許技術を充実させてきた任天堂のような企業に比較的有利で、最近台頭した新興企業にとっては極めて大きなリスクとなっている。 特に最近は任天堂とコロプラ(3668)の訴訟が話題となっている。2017年12月、コロプラの人気ゲーム「白猫プロジェクト」が任天堂の保有する特許を侵害しているとして、任天堂は事業の差止と44億円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした[2]。この訴訟で任天堂の主張が認められれば、コロプラは極めて大きな損害を被ることになる。 本レポートでは、任天堂とコロプラの訴訟を事例として分析することにより、今後同じような状況に立たされる新興企業は訴訟に備えて何をするべきかを明らかにする。具体的には、任天堂とコロプラの保有する特許をVALUENEX俯瞰解析ツールTechRadarの新インターフェース(UI2.0)により分析し、問題になっているとされる特許[2]、任天堂とコロプラの保有特許の位置関係、さらに両社の数的な勢力関係などから、事件が起こったメカニズムと今後コロプラが取るべき打ち手を考察する。


2019.01.23.

+日本国内におけるIoT分野技術動向 ~広域ファセット分類記号ZITからみる日本国内IoTの隆盛~

昨今IoTつまり、Internet of Things(以下IoT)という単語が使われ始め、過去ITが導入されていなかった産業領域にまでウェブの世界が侵食し、IoTによるリアル世界のウェブ化が世の中を席捲している。ハードからソフトへ、モノ売りからコト消費へ、そうした時代の変遷の中に私たちは生きている。今後この分野において特許数としても盛り上がりを見せることが予想される中、特許庁においても2016年11月から、IoT関連技術に関して、横断的な分類である広域ファセット分類記号「ZIT」を新設し、日本の特許文献に対して付与を行うことを決めた。 本レポートでは、上記IoT関連技術に関する日本国公開特許に基づいて、技術動向を紹介するとともに、隆盛を見せている分野の確認、またそこから今後の展望ついても予想をする。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰解析ツールTechRadarを用いた。


2019.01.09.

+ 高精度測位社会を担うRTK測位技術とその展望 ~センチメートルオーダーの測位技術が切り開くビジネス領域 ~

人工衛星からの信号を用いたGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)の測位技術は、ここ20年ほどの間に我々の生活の中で欠かせないものとなった。スマートフォンアプリでの位置情報利用の普及により、GNSSという言葉を聞き慣れていない人であっても、例えばその一種であるアメリカ合衆国の人工衛星測位システム・GPS(Global Positioning System)は誰もが知るところである。日本でも準天頂衛星システム・QZSS(Quasi-Zenith Satellite System, 通称:みちびき)の打上げにより、今後は日本近辺では常にQZSSの衛星が天頂付近を飛ぶことになるため、より高精度かつ安定的な位置情報の利用が期待されている。また、近年研究開発が進んでいる自動運転や作業用ロボット、UAV/ドローンの自動運航に関しても、GNSS測位による位置情報の把握は根幹を成す技術の一つである。 こうした実用面の広がりに伴い、GNSSの測位精度も向上してきた。単独測位(一つの受信機が複数の衛星からの距離を計算することによって自身の位置情報を把握する手法)に加えて、現在主流となっているのはDGNSS/DGPSというものである。これは、GPSをはじめとする人工衛星からの電波受信に加えて、地上に固定された基準局からの情報を参照することで位置情報を補正する手法で、これにより誤差1 ~ 2m程度までの測位精度を実現している。一方、自動運転等での利用にあたっては、誤差1mの精度では決して十分とは言えず、より高精度かつ即時的な位置の把握が求められる。そうした中で注目されているのがRTK(Real-time Kinematic)と呼ばれる測位技術である。 RTK測位はユーザー(移動体)側の受信機と、基準局と呼ばれる固定受信機の双方で人工衛星からの電波を受信する。そして、その電波から得られる情報(搬送波位相)を元にそれぞれの位置を計算し、基準局の位置情報及び位置補正情報を移動体側の受信機で受信・計算することで、正確な位置を移動体側で補足し続ける技術である。地上に固定された基準局からの情報を参照するという点はDGNSSと同様だが、搬送波位相から正確な位置を割り出すといった点が特徴である。詳細は割愛するが、これにより誤差数 センチメートルの測位精度が実現可能となり、既に実証もされている。ただし、従来のGNSS受信機では基本的には対応できないこと、そして基準局の設置位置が離れるほど精度が劣化することや、コスト面やデバイスの小型化に向けた課題もあり、汎用的な普及にはもう少し時間がかかるとみられる。 本レポートでは、このRTK測位に関する特許情報を広く分析することで、その技術開発の現況と、応用展開先及び今後の展開について予測を行うものである。


2018.12.12.

+ レンタル・シェアリングビジネスに関する技術動向

パーク 24(4666)がマツダレンタカーを買収し、カーシェアリングビジネスに参入して以降、様々な企業が 同事業に参入している。自動車を借りる、という意味ではレンタカーと同様だが、短時間での利用を想定する事 でちょっとした買い物の足として利用する等、新たな交通の足として利用が進んでいる。近年は都市部において 自転車のシェアリングが実験的に行われている等、従来見られなかったレンタル・シェアリングビジネスが現れ ている。一方で、レンタル・シェアリングは移動体に限ったビジネスではなく、CD・DVD 等はセルビジネスと 並んでレンタルを利用する人も多い。そこで、本稿では様々なレンタル・シェアリングビジネスに関する技術開 発動向を分析する事で、どのような状況にあるのかを分析することを試みた。


2018.11.28.

+ 海洋汚染で脚光を浴びるか生分解性プラスチック

最近、海洋でのプラスチック廃棄物に関する問題が大きな話題となっている。世界で生産されるプラスチック製品が増加し、それが投棄されることによって微粉化し、いわゆるマイクロプラスチックと呼ばれるものになる。プラスチックは化学的に安定であり、安価かつ加工性にすぐれるため、現代社会ではなくてはならない素材となっている。しかしこの化学的に安定という性質が裏目に出て、長期にわたり海域等に存在することになる。このマイクロプラスチックは海洋生態系にとって脅威になる可能性があるばかりでなく、近年では市販されている食塩から検出されるなど、その影響は人間にも及ぶ可能性を秘めている。 プラスチックによる汚染に対する一つの解は自然界でプラスチックが分解されることである。このような材料は生分解性プラスチックとして1980年代から研究開発が進められてきている。2017年には世界での生産量が90万トンに上り、今後も増加するとの予測もあるが、海洋汚染問題が大きく取り上げられるようになった今、さらに注目を集める可能性もある。そこでプラスチックによる海洋汚染が問題になっている今、生分解性プラスチックの技術開発動向およびプレイヤーに着目した。


2018.11.14.

+ 生物に学ぶイノベーション バイオミメティクスの技術動向分析

バイオミメティクスとは、生物の機能・構造を模倣して、工学技術に応用する分野であり、近年の顕微鏡技術や微細加工技術の発展により、多くの他分野への応用が期待される分野として注目を集めている。20世紀のバイオミメティクス研究はカワセミのくちばし形状を採用した500系新幹線や、ミツバチのハニカム構造など、自然界に存在する目で見えるスケールやミリスケールでの形状・機構・機能を人工的に模倣することが基本であった。しかし、電子顕微鏡による観察が一般的となり、ナノテクノロジーと融合することによって21世紀のバイオミメティクス技術はより複雑で微細な形状を模倣し、実際に加工技術によって再現することができるようになった。これらのマイクロ・ナノスケールにおけるバイオミメティクスの応用は、人間の眼には不可視の領域であるが、製品や技術に対して大きな付加価値を与えることが期待できる。また、医療分野への応用においては、自然に形成された細胞組織と人工物の境界を曖昧にし、人体組織に負荷のかからない再生医療技術や治療技術を実現することが期待される。現在バイオミメティクス分野の研究は大学・研究所を中心に行われているが、製品に与える付加価値の高さ、ナノテクノロジーの発展を背景に企業も参画することで、非常に潤沢な研究資源とテーマを抱える分野となる可能性が高い。  そこで本レポートでは、VALUENEX株式会社が提供するTechRadar Visionを用いて、米国公開特許公報データをもとに、バイオミメティクス関連の技術動向およびプレイヤーの分析を行った。


2018.10.31.

+ 進む少子高齢化、どうなるおむつ業界

 日本の総人口は2017年10月時点で1億2,671万人となっており、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%となった。これは増加の一途を辿っており、2025年には高齢化率は30%を超えることが予想されている[1]。こうした人口構造の変化は乳幼児や高齢者を対象とするおむつ市場においても影響を与えており、2011年には出荷額ベースの市場規模において大人用が乳幼児用を上回ったとの報告もなされている[2]。こうした流れを受けて、各社の大人用市場における動きも活発化しつつある。例えば生理用品、紙おむつなどの衛生用品の大手メーカーであるユニ・チャーム(8113)では、2016年に紙おむつの「ライフリー」の宣伝活動として認知症予防のウォーキングイベントを開催したほか、2018年に同社の高原社長は大人用紙おむつの分野に、高付加価値の新製品の投入を加速する考えを明らかにしている[3]。  しかし、減少の続く出生数の中でも乳幼児用おむつにおいて活路を見出す企業も存在する。米国に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーの日本子会社プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンでは少子化や共働き家庭の増加による可処分所得の増加などを独自のデータ分析マーケティングから明らかにし、パンパースから高価格帯製品である「肌へのいちばん」シリーズをアップグレード、売上増を実現した[4]。  一方で、商品の提供先は日本人や国内だけではない。中国人による「爆買い」はおむつ製品にも波及しており、花王の販売する商品「メリーズ」は2014年頃から中国での人気が高騰、中国人個人転売業者を筆頭にメリーズを買い占めドラッグストアなどの店頭から商品が姿を消す事態が日本各地で見られた。2009年より花王(4452)は中国への輸出や現地生産を進めており、その当時4.1%だった花王の中国におけるシェアは2015年には9.0%にまで伸びている[5]。  今後も少子高齢化していく日本の人口を前に、各企業のとる戦略はざまざまである。本レポートでは、人口構造の変化に対しておむつ市場の各企業がどういった開発戦略を実施しているかを技術的な側面から明らかにすること、及び今後のおむつに関するトレンドを予測するために、特許情報に基づく俯瞰解析を試みた。分析には当社が提供するテキストマイニング俯瞰解析ツールDocRadarを使用した。


2018.10.17.

+ 世界トップの光学技術を先端医療機器の領域へ ~日本勢光学系精密機械メーカーの医療機器用光学技術開発動向~

 かつてから世界トップレベルの光学技術をもとにデジタルカメラやビデオカメラ市場で長年世界トップの市場シェアを占めている日本の光学系精密機器メーカーは、自社保有の光学技術を応用して医療機器分野にも参入している一方、同分野の技術開発以外にも関連企業との戦略的M&Aの締結や関連事業部門への投資などを通じてその市場影響力を拡大している。 本レポートでは、そのような精密医療機器に関わる光学技術の開発動向を日本国公開特許に基づいて紹介するとともに、関連市場の主要メーカーについても議論する。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールTechRadarを用いた。


2018.09.19.

+ USトップ10中3社がベンチャー、バイオリアクター開発動向

 バイオリアクター技術は、生体触媒など生物の力を借りて、目的の物質を生成する。通常の化学触媒反応のような高温・高圧などの条件が不要で、反応速度がより速い特徴がある。更には、副生成物が少ない、工程が少ないなどの優れた特徴を有し、最近開発が活発化している。あとで紹介するように、米国公開特許件数ランキングで上位10社中、ベンチャーが3社という活況ぶりである。 本レポートでは、このバイオリアクターの技術について、世界の縮図として、米国における最近の動向を調査すべく、米国で公開された特許公報を元に分析を行った。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールTechRadarを用いた。


2018.09.05.

+ 日本国内の鉄道事業者の鉄道技術動向

 新興国を始め、世界での鉄道システムの需要が高まっている。2019~2021年平均の市場規模は約24兆円とも言われ、アジア、西欧、北米を中心に成長基調にある[1]。他方、日本国内に向けてみると、人口減少といった構造的な要因により、大幅な需要の増加は見込みにくい[1]。そのため、国内の鉄道関連のメーカーは海外展開に取り組んでおり、日立製作所が受注したロンドンでの都市間高速鉄道プロジェクト、川崎重工業の米ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車の受注といった事例が有名である。JRを始めとする鉄道事業者においては、運行管理や保守メンテナンス等の技術支援、コンサルティングに取り組んでいる[2]。
日本勢は、運行ダイヤの正確性や高い安全性さらには技術力を武器に、海外進出を企図しているが、コスト競争力に強みを有する中国企業を相手に、海外鉄道関連案件の受注を失することもある。将来的には、技術力に関しても、中国企業に並ばれることも想定される。 今回の解析レポートにおいては、日本の鉄道技術を紐解くことを企図に、国内の鉄道事業者にフォーカスし、技術俯瞰を行った。 なお、本稿においては、下記の主要鉄道事業者を解析対象として取り扱っている。
<JR系:8企業> 北海道旅客鉄道、東日本旅客鉄道(9020)、東海旅客鉄道(9022)、西日本旅客鉄道(9021)、四国旅客鉄道、九州旅客鉄道(9142)、日本貨物鉄道、鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)
<大手私鉄系:16企業> 東武鉄道(9001)、京成電鉄(9009)、西武鉄道(西武ホールディングス(9024)の子会社)、京王電鉄(9008)、小田急電鉄(9007)、東京急行電鉄(9005)、京浜急行電鉄(9006)、東京地下鉄、相模鉄道(相鉄ホールディングス(9003)の子会社)、名古屋鉄道(9048)、近畿日本鉄道(近鉄グループホールディングス(9041)の子会社)、京阪電気鉄道(京阪ホールディングス(9045)の子会社)、阪急電鉄(阪急阪神ホールディングス(9042)の子会社)、阪神電気鉄道(阪急阪神ホールディングス(9042)の子会社)、南海電気鉄道(9044)、西日本鉄道(9031)


2018.08.22.

+ 水素の化学的製造に係る技術とプレイヤー ー水素発生・脱水素反応ー

 2017 年12 月、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(経済産業省)によって水素基本戦略が策定された。 この戦略は、ガソリンや液化天然ガスなどの従来一次エネルギーと同程度の水素コストの実現およびそれに向け た水素の生産から利用までの政策群を統合したものである。シナリオとして、2030 年までに国際水素サプライチ ェーン構築や国内再生可能エネルギーに由来する水素製造技術の確立を行い、生産量を 30 万トン(現状0.02 万 トン)、コストを30円/Nm3(現状 100円/Nm3)などにし、さらにその先には 1000 万トンの生産や 20円/Nm3 のコストなどが見込まれている。水素に係る政策は海外でも活発に進められており、中国では2016年4月にエネ ルギー技術革命イノベーション行動計画が発表され、重点分野の一つに水素・燃料電池が取り上げられている。ま た米国では 2004 年から Hydrogen Fuel Initiative が、欧州では 2008 年から Fuel Cell and Hydrogen Joint Undertakingが立ち上げられている。 今後さらに注目が高まることが予想される水素エネルギーであるが、その中でもとくに水素製造はキーとなる 技術になると考えられる。水素製造に関しては、電気化学的な手法や光触媒を利用した方法、あるいは化学反応を 利用した手法など、様々なアプローチがあるが、ここでは化学的アプローチとして水素生成(発生)反応および脱水素反応に焦点を当ててその技術開発動向およびプレイヤーを明らかにした。


2018.07.25.

+ 成長市場と共にあったアップル、スマートフォン市場の停滞で今後はどうなるか

アップルがこれまでに出した新製品は大きな成長市場の創出につながっている。音楽プレーヤーのiPodやオンライン音楽配信のiTunes、スマートフォン及びアプリのiPhone、タブレット型端末のiPadなど枚挙に暇がない。実際に、アップルが2007年に初代iPhoneをリリースして以降、世界のスマートフォン出荷台数は2007年に1.1億台だったものが、2011年に4.9億台、2015年に13.8億台 [1]と急増した。最近の事例だと2016年にヘッドホン端子のないiPhone7とBluetooth対応イヤホンのAirPodsをリリースしたことによる、ワイヤレスヘッドホン市場の創出が挙げられる。米国では2017年1月から7月までで90万台以上のワイヤレスヘッドホンが販売されており、その期間の全ワイヤレスヘッドホン売上の85%をAirPodsが占めている[2]。今後ヘッドホン端子のないスマートフォンの増加やBluetoothやバッテリーなど関連技術の成長を受けて、他プレーヤーの参入など、ワイヤレスヘッドホン市場の活発化および拡大が予測される。アップルは、まだ技術が成熟していない新市場の初期に完成度の高い製品を投入、瞬く間に高いシェアを握るとともに市場を拡大させてきた。さらに、こうした新市場の創出を原動力としてアップルは成長を持続させてきた。
 一方で最近発表された米調査会社IDCの調査結果によると、スマートフォンの全世界出荷台数は2017年に前年比で0.5%減少[3]したことから、市場が衰退へと転じたことが窺える。今後はiPhoneから得られる莫大な利益に頼って成長を持続するのは困難を増していくと予測される。
 本レポートでは、これまでアップルが新製品の成長市場をいくつも創出し、それを成長の源としてきたことを踏まえ、アップルの今後を予測する。具体的には、アップルの特許出願をVALUENEX俯瞰解析ツールTechRadarの新インターフェース(UI2.0)により分析し、同社の注力技術の変遷を振り返りつつ、最新の注力技術を明らかにし、アップルが今後どのような新製品を繰り出し得るのか、あるいは未だ見えてこないのかを考察する。


2018.07.11.

+ 水害に関連した技術動向

 7月に入り、西日本を襲った大雨はこれまでの常識では考えられないほどの大きな被害をもたらした。死者は本稿執筆時点で100名を超え、今後も増え続ける可能性がある。これまでであれば特定の地域や河川流域にて発生していたものが、広島、岡山、愛媛等複数の府県にまたがっており、広範囲に被害が及んでいる。
 自然災害を完全に防ぐことは難しい。一方で、水害を防ぐための技術開発も行われている。そこで、今回は水害に関連した技術開発の動向を探る事とした。


2018.06.27.

+ 製薬・ヘルスケア業界における近年の技術ポートフォリオと投資傾向

武田薬品によるシャイアー買収の動きが注目を集めているが、近年、製薬業界では活発に M&A 等の投資活動 が行われている。その背景には、新薬創出がますます難しくなってきたことがあり、巨額の時間と費用をかけて も、商品化に結び付く成功確率は約3万分の1とも言われ、非常にリスクが高いことが挙げられる。各社は有望な 新規技術やパイプラインといった新薬候補を求めて、投資や買収の規模を拡大させている[1]。 図1 に、今回の調査対象とした5 社(Celgene、GlaxoSmithKline、Pfizer、Boehringer Ingelheim、Novartis) の投資回数と投資額を示す。なお、本レポートでは「投資」と「買収」を区別して表記しており、以下では「投資」 と称する場合には「買収」を含まない。年々、投資回数は伸びており、特にこの5 年間の増加が著しい。5 社の中 でも傾向に違いが見られるが、今回は投資回数の最も多いCelgene 社と、最も少ないBoehringer Ingelheim(BI) 社を分析の対象とする。
本レポートでは、①5 社(Celgene、GlaxoSmithKline、Pfizer、Boehringer Ingelheim、Novartis)の特許及 び投資先の特許を俯瞰分析し、注力領域を抽出した。②5 社の金額ごとの投資領域を俯瞰分析し、投資トレンドを 分析した。③俯瞰分析に基づいて、Celgene 社とBoehringer Ingelheim 社の投資する技術領域を比較した。④分 析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールDocRadar を用いた。


2018.06.20.

+ 自動運転車の鍵を握るLIDARの応用展開先

 自動運転の要となる画像認識技術、その情報を生成するデバイスがLIDAR だ。LIDAR とは、Light と Radar の合成語である。オリジナルの概念は1930 年代から存在している。高精細Mapping が可能であり、航 空分野では30cm 単位で三次元マッピングが実現している。LIDAR の開発や利用するサービスに取り組む企業 数は、特許出願企業数と照らして年々増加しており、かつてのエレクトロニクス業界の常であるように、 LIDAR も量産化され、標準化がなされると、価格が抑えられてコモディティー化してゆく部品の1つになるも のと考えられる。LIDAR 技術の開発はどのような課題があり、主要企業であるGoogle の強みと弱みの技術が何 であり、どのような応用展開先があるのかを俯瞰解析を通じて明らかにした。


2018.05.30.

+ フェイスブック:流出するデータ~技術的観点からみるフェイスブック&ケンブリッジ・アナリティカ事件~

2018 年3 月、フェイスブックが収集する8,700 万人にも上るユーザーデータが、ケンブリッジ・ア ナリティカ社を通じて政治的活動に利用されたことが判明した。今回の事件における重要な焦点と して、このような事態を招いた技術、我々のデータの利用可能性と影響範囲が挙げられる。 そこで本稿では、技術的な観点から本件の核心を明らかにするために、特許情報を用いてフェイス ブックの技術ポートフォリオを分析する。パンドラの箱を開けるに至った技術の原点を改めて辿るべ く、フェイスブックが最初に特許を取得した2008年から2018年4月にいたる米国特許商標庁(USPTO) のデータベースから、フェイスブックが取得している2,826 件の特許情報を収集し、VALUENEX 株 式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツール(VALUENEXRadar)による分析を行った。


2018.05.16.

+ 次世代材料として注目されるセラミックの国内開発動向

セラミックは古くから我々の身近なところで使われており、特にその耐環境性を利用し厳しい条件下でさまざまな分野にて応用がなされている。近年では耐熱性を活かしセラミック基板などの電子部品への応用が進められ、セラミックは高分子材料・金属に代わる次世代材料として、技術開発が注目されている。そこで今回は次世代基板材料などとして実用化が進められているセラミックについて公開された特許を収集し、技術開発動向について特許俯瞰ツールTechRadarを用いて調査を行っていく。


2018.05.09.

+ 大学保有知財俯瞰分析に基づく産学連携マッチングの可能性

大学が民間企業から受け入れる共同研究費­および共同研究実施件数は­近年続伸しており、日本国内において、平成27年では金額ベースで467億円となり、研究実施件数は2万件を越えた[1]。産学連携の形態としては、従来から企業の担当部門と大学研究室によるプロジェクトベースの共同研究が中心であるが、近年では大学と民間企業の比較的長期に及ぶ包括契約を締結する事例が出てきている。武田薬品工業株式会社(4502)と京都大学iPS細胞研究所、中外製薬株式会社(4519)と大阪大学免疫学フロンティア研究センターの包括契約がこれに該当する。また、大学発スタートアップ企業に対する民間企業の投資も盛んになりつつあり、産学連携の形態が多様化しつつある。
 投資規模、共同研究件数が増加傾向である一方で、これまでの経産省や文科省が実施してきた産学連携関連の調査報告によれば、解決が待たれる課題も見えてきている。課題の中で目立つものとして、研究領域、研究者のマッチングに関連のものが多い。大企業と大学の組み合わせでは「関係性の固定化」が課題としてあがっており、中小企業と大学では「そもそもお互いを知らない」「テーマのミスマッチ」が解決すべき課題としてあげられている。研究分野および共同研究先(研究機関、研究者)候補探索に関して、アンメットニーズが顕在化している。
 情報の網羅性を備えた効率的なマッチングチャネルの登場が期待されている状況であり、特許ビッグデータを用いた俯瞰分析が活用できる可能性がある。本レポートでは、2018年3月時点での国内大学総合ランキング上位10校の大学を対象[2]に、大学が出願した特許の俯瞰分析を実施した。大学が特許を出願している研究分野を可視化し、研究分野、研究者の探索の可能性に関して検討した。日本で公開された特許公報を元に分析を実施し、分析にはVALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールXLUS TechRadarを使用した。


2018.04.18.

+ 任天堂の技術動向分析

2017年3月3日に任天堂(7974)より、持ち運べる家庭用テレビゲーム機「Nintendo Switch」が販売された。同テレビゲーム機は、人気タイトル「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」、「マリオカート8 デラックス」、「スプラトゥーン2」等の販売も貢献して、2018年2月時点で、全世界で1,213万台販売されている[1]。同社は1983年のファミリーコンピュータの発売を皮切りに、家庭用を中心としたゲーム機において日本を代表するメーカーとなった。
 任天堂は、PlayStationシリーズを手掛けるソニー・インタラクティブエンタテインメント、Xboxシリーズを手掛けるマイクロソフトとの競争で火花を散らしているが、スマートフォンの販売以降は、モバイルゲーム(またはスマホゲームとも呼ばれる)と家庭用テレビゲーム機といった、業界自体での競争が目立つようになっている[2]。
 このように、同業種内の競争から異業種間の競争へ変化していることもあり、任天堂自身は、eコマース事業を手掛けるディー・エヌ・エー(2432)との業務・資本提携を2015年に行っている[3]。2016年には、同社の関連会社である株式会社ポケモンとナイアンティックにより共同開発されたスマートフォン向け位置情報ゲームアプリ「Pokemon GO」を世界の主要各国でリリースし、爆発的なヒットを飛ばしたことは記憶に新しい。このゲームアプリは拡張現実(AR)とスマートフォン内のGPS機能を組み合わせて遊ぶものであり、従来の家庭用テレビゲーム機とは別種の「遊び」を提供している。
 また、同社は2018年4月20日に、NINTENDO LABOといった製品(段ボール工作キットでピアノや釣り竿等の道具を作成し、Nintendo Switch上で遊ぶゲーム)を販売予定していることからも、家庭用テレビゲーム機の従来の枠組みを取り払おうとしているようにも見受けられる。そこで、本レポートでは、任天堂の研究開発/技術開発の動向を明らかにするために、同社の出願した特許を対象にクラスター分析を試みた。


2018.04.04.

+ 5G時代到来:世界の技術動向を視る

2018年2月に平昌オリンピックが開催された。現場にいるかのようなリアルな感覚を超高精細画像配信で視聴者に届ける世界初の5Gトライアルサービスを、韓国最大の通信事業者KT(KRX: 030200)が実施した。この5Gトライアルでは、INTEL(NASDAQ: INTC)、ERICSSON(NASDAQ: ERIC)、SAMSUNG(KRX: 005930)が技術を提供した[1]。5G、いわゆる第五世代移動通信システムとは、現在規格化が進行中の次世代無線通信システムとして世界中で話題になっている[2]。  5Gの登場には、以下に示す3アイテムを中心に既存規格に関する様々な問題解決や機能拡張が期待されている。1.スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末の普及がもたらす多数の端末接続への対応2.大容量のリッチコンテンツの配信にとって超高速ネットワークに対するニーズ3.AI、IoT、自動運転、M2Mなど最先端技術が要求する低遅延技術 日本は2020年の東京オリンピックまでの5G実現に向け、積極的に研究を進んでいる。2014年9月、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)が結成され、2017年5月に5Gは「フェーズコンセプト作り」から次のステージである「コンセプト実装」に突入することを宣言した[3]。世界的な取り組みとしては、日本の電波産業会(ARIB)、情報通信技術委員会(TTC)が参画する3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)において5G規格化のプロジェクトが進められている。5G標準化について初の技術仕様は2016年のリリース15(5Gフェーズ1)である。リリース16(5Gフェーズ2)は国際電気通信連合が提出されたIMT-2020と連動して、2019年末に完成予定である[4]。
 本レポートでは、特許情報を俯瞰し、直近の5G技術動向および主要プレーヤーの技術ポートフォリオに関して分析した。日本、米国、欧州、中国、韓国で公開された特許公報を分析対象とし、分析にはVALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰解析ツールVALUENEXRadar Documents (DocRadar) を使用した。


2018.03.07

+ 電気自動車(EV)の躍進で重要度を増す電力 ー電力会社の技術開発状況ー

次世代のモビリティとして電気自動車(EV)の増加が見込まれている。フランスやイギリスでは、2040年以降に国内のガソリン及びディーゼル車販売を禁止する方針を打ち出した。また中国においてもEVをはじめとする新エネルギー車の導入を促進する政策を発表するなど、政策的な取り組みも含め、今後EVが急速にその数を伸ばす可能性が高くなってきている。このような動きに対し、各自動車メーカもEV開発に力を入れており、トヨタ自動車は2030年までにハイブリッドを含むEVの販売台数を550万台以上にするとの目標を掲げている。 EVの普及の可能性が高まるなかで、重要度を増すのはエネルギーソースである電力である。やや古いデータであるが、日本における2012年度の最終エネルギー構成比では、運輸部門は23.1%(3300pJ)と約1/4を占めており、そのうちの80%以上がガソリンあるいは軽油をエネルギー源としている(出典:エネルギー白書2014)。このうちのかなりの部分がEV化されるとなると、電力に係る負荷は大きなものになるものと考えられる。 EVの普及により今後さらに需要が高まる電力であるが、日本において、電力会社各社はどのような技術開発を行っているのか、またその開発にはEVによる需要増加やそれに伴う負荷変動は織り込み済みであるのか、といった点に関心が持たれる。そこで、2001年以降に公開された電力会社各社の特許をもとに、電力会社の技術開発動向、とくにEVあるいは負荷変動への対策について明らかにするために、クラスター解析による分析を試みた。


2018.02.21

+ Google中国市場再参入の鍵を握るTencentとの協業分析

最近、Googleが中国市場への再参入を検討している。今回は、SNSを手掛ける世界最大規模の総合IT企業であるTencentをパートナーとして選んだ。2006年の初参入時では、ネット検索サービスについて単独参入を行ったがうまくいかず2010年に一度撤退している。この失敗を踏まえての、パートナーと組んでの再参入である。2018年1月18日の発表では、「長期にわたる特許の共有で合意」したと言われている。但し、共有する内容について「幅広い範囲の製品と技術」と述べるにとどまり、詳細については語られていない。  そこで、本報告では、具体的に、どの技術分野での共有がなされる可能性があるかを調べるべく、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールDocRadarを用いて、両社の特許の技術内容と、その技術類似関係を調査した。今回の共有におけるTencent側のメリットとしては世界進出、Google側のメリットとしては中国再参入である。前者の分析には世界特許の分析、後者の分析では中国特許の分析が必要となる。今回は、Googleの中国再参入の可能性を調べるべく、中国特許での分析を行った。


2018.02.07

+ 日本で投資拡大中のKKRは日立国際買収で相乗効果を生み出すか

米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は2017年12月9日、日立製作所(6501)子会社の日立国際電気(6756)について、日立製作所が保有する51.67%を除く日立国際電気の普通株式に対する公開買付けを完了したと発表した。日立製作所は事業再編の一環として本業との相乗効果が小さい企業の売却を続けており、日立国際電気もその対象となった。  KKRは近年日本企業の買収を活発化させている。2014年のパナソニック(6752)のヘルスケア事業(現・パナソニックヘルスケア)の買収を皮切りに、2015年にはパイオニア(6773)のDJ機器事業(現・PioneerDJ)を買収したほか、2016年11月には日産自動車(7201)系列最大手のサプライヤーであったカルソニックカンセイのTOBを発表した。さらに2017年1月には今回の日立国際電気と同じく日立製作所から日立工機のTOBを発表している。いずれも技術開発を行う企業であり、各社の間に技術開発上の相乗効果が見込める可能性がある。そこで本レポートでは、KKR傘下のこれらの企業の国内特許出願を対象に、当社の提供する特許俯瞰解析ツールTechRadarにより解析・可視化することを通じて、各社の間の相乗効果を探った。 なお、上記日立工機までのKKRによる買収先企業に関する相乗効果については、2017年2月22日発行の当社レポート「KKRは傘下企業間の相乗効果を起こせるか」を参照されたい。


2018.01.24

+ 「デジタルメディスン」におけるベンチャー企業と大手製薬企業の技術親和性評価

医療ビックデータ・人工知能 (AI)・IoT (Internet of Things)とライフサイエンス技術との融合は、医療や創薬のパラダイムを根底から変革し、P4医療 (Preventive、Predictive、Personalized、Participatory) に向けた動きを加速している[1]。従来の医療情報に加えて、IT技術により得られる新しい医療情報を融合することにより、患者の個人レベルでの最適な治療を行うことがP4医療の概念である[2]。一方で、多様な分子情報(ゲノム、オミックスなど)を収集、データベース化し、分析することが、P4医療を実現するための課題とされる[3]。融合分野において活躍が期待されているのが、関連分野のIT技術に特化し、創業されたベンチャー企業のである。2003年にカリフォルニアで創業したベンチャー企業Proteus Digital Health (PDH) はITと医薬品・医療機器技術を融合させた製品・サービスの研究開発を主事業とする。同社は2009年に製薬大手ノバルティス製薬と、2012年には大塚製薬と相次いで共同研究を開始した[4]。2017年、PDHは、抗精神病薬の錠剤に極小センサーを組み込んだ世界初のデジタル医薬品「エビリファイ マイサイト」が米食品医薬品局 (FDA) から製造販売の承認を受けたと発表した[5]。最近では、世界的製薬メーカーが従来は困難であった生体内の各種測定やデータ収集を、様々な技術を融合して実現しようと動き始めている[6]。 本レポートでは、①PDHの全体の特許を事例に、俯瞰分析を用いて、デジタルメディスン関連技術を抽出し、技術動向分析を行った。②PDHとノバルティスグループ、大塚製薬グループ (4578) の医薬品および医療機器技術の親和性評価に関して検討した。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールDocRadarを用いた。


2018.01.10

+ テレビに関する日韓の技術開発動向

テレビがブラウン管から液晶に変わって久しい。当初、日本メーカーの独壇場であったが、近年はサムスンやLG電子の販売数が伸びており、ディスプレイパネルの自社製造から撤退したメーカーも多い。一方で、日本のメーカーが開発した画像処理技術を用いた4Kテレビを量販店がプライベートブランド製品として販売し、すぐに完売しているなど、日本メーカーがもつ要素技術を有効活用する事例も出てきている。 そこで、今回はテレビに関連した技術開発の動向をVALUENEXが提供しているTechRadarを用いて分析する


2017.12.27.

+ ゲームチェンジャー「全固体電池」の技術動向分析

今、全固体型リチウムイオン電池(以下、全固体電池)に大きな注目が集まっている。2017年10月に開催された東京モーターショー2017の記者会見では、トヨタ自動車・副社長のDidier Leroy氏が、全固体電池の2020年代前半の実用を目指していると述べた [1]。更に、2017年12月には、ホンダや日産も全固体電池の開発に取り組んでいることを明らかにした [2]。欧州・中国をはじめとするEVシフトの潮流も相まって、ますます電池がキーデバイスとなる。全固体電池は正極・負極・電解質が固体であるため、液漏れの恐れがないという安全性向上、数分で80%-90%充電することが可能な超急速充電、体積エネルギー密度の大幅向上等が利点として挙げられる。一方で、液漏れ以外の安全性、量産技術が未確立、電解質と電極の界面抵抗が大きい等の課題がある [3]。全固体電池の用途はEVだけではなく、超薄膜にすることでICカードやIoT端末への搭載、太陽電池セルとの一体化等、用途の大幅な拡大が期待される [4]。国内外の自動車メーカー、化学メーカー、電池メーカー、半導体・電子部品メーカー、大学、ベンチャー企業等が参入しており、新規参入組が多く、今後、熾烈な競争環境になることが予想される。  そこで本レポートでは、VALUENEX株式会社が提供するTechRadar Visionを用いて、日本国公開特許公報データをもとに、全固体電池関連の技術動向およびプレイヤーの分析を行った。


2017.12.13.

+ 満を持して日本上陸したAmazon Echo・Google Homeの基盤技術…音声認識技術の最新動向

2017年秋、かねてから米国で話題となっていたスマートスピーカーAmazon Echo・Google Homeが満を持して日本に上陸した。これらスマートスピーカーは搭載される音声認識アシスタントを介して、音楽の再生や家電のon/offなどができるデバイスである。米国では3500万人以上のユーザーがスマートスピーカーを利用しており、Amazon、Googleに引き続きMicrosoftやソニー、LINEなども続々とスマートスピーカー市場に参入を発表し、商品を投入している。 そこで今回はスマートスピーカーの基幹技術である音声認識技術について公開された特許を収集し、技術開発動向について特許俯瞰ツールDocRadarを用いて調査を実施した。


2017.11.29.

+ 完全無人化目前の駐車支援に関する 日本企業と海外企業の異なる技術開発領域

カナダ・モントリオール市で開催された「第24回ITS世界会議」(会期:2017年10月29日~11月2日)で、アイシン精機(7259)をはじめとするアイシングループによる、自動バレーパーキングシステムのデモンストレーションが行われた。アイシングループは2000年頃から駐車支援システムの開発に取り組み、2020年までに完全無人化のステージ4の実用化を目指している。今回のデモンストレーションでは、数センチ単位の精度を披露しており、2~3年後の実用化が現実味を帯びている。 駐車支援システムは2000年中頃に実用化され、現在はリモートや完全自動化など、より高度なシステムの実現に向けて、世界各国で開発が進められている。市場規模としては、2016 年時点で約500万弱の搭載車が、2020年には1200万台以上、2025年には4000万台近くまで達するとする予測もある。 駐車支援システムの技術開発は、世界各国で、様々なプレイヤーが実用化・高度化に向けて取り組んでおり、市場規模は大きく拡大することが期待されている。そこで、実際に開発を行っているプレイヤーとその注力分野を明らかにするため、VALUENEXが提供する俯瞰解析ツールDocRadarを用いて、駐車支援システムに関する技術開発動向の分析を試みる。


2017.11.15.

+ M&A事案における事業会社間の技術親和性評価の可能性

日本企業が関わるM&A件数は、リーマンショックの影響を受けた2010年の「谷底」以降、年々増加傾向にある。2016年は件数が2652件(歴代4位)、金額は16兆円程度(歴代2位)であり、金額ベースでは前年比2.6%増となる。また、2016年は比較的大型案件が多かったのが特徴であり、記憶に新しいソフトバンク(9984)によるアーム・ホールディングスの買収(約3.3兆円)が成約金額で第一位であった。第二位には約8,900億でアサヒグループ(2502)がSABミラー関係のビールの事業会社買収、第三位と四位はそれぞれテンセントによるスーパーセル(ソフトバンク傘下ゲーム会社:約7,700億円)とキヤノン(7751)による東芝メディカルシステムズの買収(約6,600億円)がつづく。
 M&A取引においては、対象会社の事業内容、経営の実態、経営環境、保有技術を詳細に調査するデューデリジェンス(DD)が実施される。ビジネスDD、ファイナンスDD、法務DDなどには会計士・税理士・弁護士といった専門家が担当することが多く、手法やプロセスが確立されている。
 一方では、技術DDでは一般的には対象会社事業分野の技術的専門家に対するインタビュー調査、弁理士などの専門家による知財評価などが実施される。これに対して、大から中規模の企業が関係する買収の場合、技術的分野は多岐にわたり、かつ知財保有数が膨大であるケースである事案が多い。限られた評価期間では、量と質の両面で満足した技術的評価を実施することは困難と言わざるを得ない。
 本レポートでは、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの買収を事例に、特許の俯瞰分析を用いて、定量的な技術親和性評価の可能性に関して検討した。日本で公開された特許公報を元に分析を実施し、分析にはVALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツール TechRadarを使用した。


2017.11.01.

+ 太陽電池と蓄電池 ー再生可能エネルギー利用促進に向けた技術動向ー

再生可能エネルギー(RNE)の低コスト化が世界的に加速している。2017年に丸紅がアラブ首長国連邦で着手した大規模太陽光発電事業では、3円/kWh以下のコストを実現するとして話題となった。また経済産業省の資料によれば、2017年での世界の太陽光発電コストは10円/kWh程度であり、2009年時点(約35円/kWh)の約1/3となっている。日本は2017年時点で16円/kWh程度と世界平均より高くなっているが、2016年に発表された自然エネルギー財団の報告書によれば、日本メーカ製のモジュールコストの高さや建設工事費の高さが影響しているとのことである。このまま低コスト化が進めば、RNE導入がさらに促進するものと考えられる。
 一方で、RNEを系統に大量に接続することはリスクがある。RNEによる発電は、まさに自然任せであり、太陽光発電をはじめとするRNEの発電量が電力需要を上回ってしまった場合、何らかの形で処分する必要が生じる。欧州は電力網がメッシュ状で広域につながっているため、余剰電力を他国に売電することで回避ができるが、日本は電力網がくし形のため融通が利きにくい。日本でも近隣諸国を含めた広域電力網を組むことが出来ればRNEの余剰電力問題を回避できるが、これが実現するには相応の時間が必要となることが考えられる。 このような問題を回避する一つの手段として考えられるのが、RNEと蓄電技術の組み合わせである。とくに太陽光発電の場合、確実に夜間は発電ができないので、昼間発電した電力を蓄電して夜間に消費するなどが出来れば、余剰電力発生の低減につながる。そこで、太陽光発電と蓄電池の組み合わせについて、日本国内での開発動向を明らかにするため、日本国公開特許公報をリソースとしてクラスター解析を行った。


2017.10.18.

+ 実用段階に入りつつある量子コンピュータの開発動向

現在の一般的なコンピュータは、状態として0か1かの2値状態であるビットしか持ちえない。多数の状態を計算する場合は、ビットの組合せで状態を表現し、状態ごとに計算を行う必要がある。ところが、極微な世界などで成立する量子力学の枠組みでは、0と1のどちらでもある重ね合わせの状態が存在する。先の一般的なコンピュータで状態毎に行った計算は、重ね合わせの状態を用いれば1回で全ての状態の計算が完了可能となり、飛躍的に計算速度が向上すると言われている。1980年代にアメリカのノーベル物理学賞受賞者であるファインマンらが原理として提案していたことである。当時は夢のように語られていたが、昨今、実用段階に近づきつつある。2011年、カナダのベンチャー企業D-WAVE SYSTEMSが初の商用向け量子コンピュータ製品を発表し、実際にGoogleやNASAが導入したのである。最近では、世界的材料メーカーなどが従来の実験や計算では困難とされる新素材探索を、量子コンピュータを利用して実現しようと動き始めている。 本レポートでは、量子コンピュータの技術開発動向を調査すべく、米国で公開された特許公報を元に分析を行った。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニング俯瞰分析ツールXLUS TechRadarを用いた。


2017.10.04.

+ 自社技術を応用して新分野に参入したダイヘンと TechRadarでみた参入前の同社を取り巻く環境

先週金曜日(2017年9月22日)、米アップルからiPhone8・8Plusが発売された。11月に発売が予定されているiPhoneXも含めると実に様々な新機能が搭載されている。ワイヤレス給電、顔認証などは他製品分野では実用化されて久しいが、iPhoneへの搭載でさらに一般への浸透が進みそうである。  さて、これら新機能のひとつ、ワイヤレス給電の分野への参入に挑んだ日本企業がいる。大手重電メーカーとして知られるダイヘン(6622)だ。同社は変圧器などの電力機器や産業用ロボット、溶接機、高周波電源などを手がけており、この高周波電源を中心とした各種技術を組み合わせることでワイヤレス給電分野への参入を果たした。  ワイヤレス給電にはいくつかの方式があり、iPhoneに搭載されているのはQiという規格である。この規格で利用されているのは電磁誘導方式であり、古くから実用化されていたが近距離で小電力の給電に限られていた。これに対し、2006年にマサチューセッツ工科大学が数m以上離れた対象への給電に成功し、自動車などの大型機器に対する給電の可能性が広がった。ダイヘンはMITによる発表後、大出力の給電ができるようワイヤレス給電用の高周波電源の開発をスタートした。そして2014年に研究用電源システムを発売、2016年には無人搬送台車用ワイヤレス給電システムを産業機器分野において世界初となる実用化にこぎつけるなど着々と事業展開を進めている。


2017.09.20.

+ 有機ELディスプレイに関する技術動向

先日、Apple社がiPhoneの新型機を発表した。フラッグシップ機となるiPhone Xには事前の予想通り、有機ELディスプレイが搭載されることが示された。有機ELディスプレイは理論上消費電力が小さい、画質が良い等の利点があるとされ、最近発売されたスマートフォンの上位機種に搭載されることも多く、通常のテレビとしての販売も始まりつつある。有機ELディスプレイについては当初日本メーカーが積極的に開発を行っていたが、最近では韓国メーカーが積極的に研究開発を進めている。そこで、今回は、有機ELディスプレイについて、現在どのような研究開発がなされているのか、分析を行った。


2017.09.06.

+ 日本の宇宙産業を築く、国内特許ポートフォリオ を侵食する海外企業の脅威

2017年7月30日、民間企業単独で開発された国内初の宇宙ロケットの打ち上げが行われた。開発・打ち上げを行ったのは、ライブドアの元社長である堀江貴文が創業したインターステラテクノロジズ社という北海道のベンチャー企業である。結果は、地上から飛び立ったものの、大気圏を上昇中にロケットの位置などを示すデータが得られなくなったために、エンジンの緊急停止が行われ、海上へと落下した。失敗には終わったが、これまで宇宙航空研究開発機構(JAXA)主導の下に行われていた宇宙ロケットの開発・打ち上げに、日本の民間企業がロケットの打ち上げに参入した今回の出来事は、日本において新たな宇宙ビジネスの始まりを期待する出来事である。
 しかし、今年3月に特許庁より、航空機・宇宙機器関連技術の特許出願技術動向に関する調査報告書が公表され、その調査結果には、日本国内の企業・団体は宇宙機器分野における特許の出願意識が他国よりも低いと考えられ、さらに日本国内における他国の出願割合が高いことが指摘されている。宇宙産業は近い将来、40兆円を超える市場規模へ成長すると言われているが、特許庁が指摘する内容は、日本国内の企業が参入するにあたり、大きな障害へと発展する可能性が高い。 そこで、本レポートでは、広く特許を収集し、宇宙機器関連の技術から、さらに宇宙産業に関わる周辺技術まで含めて、日本国内の特許ポートフォリオがどのような現状にあるのか、VALUENEXが提供するTechRadarを用いて分析を試みていく。


2017.08.23.

+ 家電界の革命児 ダイソンが次に狙うプロダクトは?

革新的な家電製品で知られるダイソン。サイクロン掃除機を皮切りに羽根のない扇風機や筒状のドライヤーなど独創的なプロダクトを次々に世に送り出している。苦戦する日本の家電メーカーを尻目に2016年度の売上高は前年度比45%増の25億ポンド(約3,625億円)を達成している。
 今回はそんなダイソンの技術的な強みを把握すべく、ダイソンに関連する特許に対する技術俯瞰解析を行った。技術俯瞰解析ではダイソンの持つ技術的な強みが明らかになっただけでなく、ダイソンが新しいカテゴリのプロダクトを開発していることを発見した。さて、皆さんはダイソンが次に狙うプロダクトが何かお分かりだろうか?


2017.08.16

+ 台風・ゲリラ豪雨…防災をはじめとする気象に関する国内研究開発動向

近年、日本国内でゲリラ豪雨や台風の被害が多くなっている。直近では2017年7月には九州北部豪雨で多くの被害があっただけでなく、過去にも豪雨・台風などを原因とする多くの災害を経験している。気象庁発表の統計(1)によると1時間降水量50mm以上の発生回数は2016年で257回となり、迅速な降雨量の予測などの技術は防災面で重要な課題と考えられる。 今回は公開された気象学に関連する特許を収集し、研究開発動向について特許俯瞰ツールTechRadarを用いて調査を行っていく。 1 アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について


2017.08.02

+ 世界的な課題に挑む環境技術 プラスチック廃棄物処理の技術開発動向

米ジョージア大学の研究チームの推計によると、1950年以降に世界で約63億トンのプラスチックごみが発生したという。この期間のプラスチック製品の製造は約83億トンであり、その約4分の3が、ごみとして廃棄されている。膨大なプラスチックごみの発生は世界的に問題となっている。一方、日本では廃プラスチックの利用率が8割を超える。この理由としては、リサイクル意識の高まりのほか、日本のプラスチック廃棄物の処理技術の高さがあると考えられる。世界的な問題に日本の技術が貢献できる可能性が想定される。
 そこで、日本のプラスチック処理技術の技術開発動向を知るため、本レポートでは、プラスチック廃棄物の処理に関連する日本国公開特許公報を収集し、弊社の提供する特許解析ツール TechRadar Vision (テックレーダービジョン)により俯瞰レーダーを作成し、分析する。


2017.07.26.

+ 廃熱駆動熱音響技術を利用した大型インフラ用センサ向

熱音響技術は、エンジンの廃熱などの熱源から空気などの媒質の温度差を生じさせ、媒質の振動運動すなわち音響現象を導く技術である。この音響現象である運動エネルギーから電気エネルギーなどに変換することにより、廃熱からの有効なエネルギー回収装置となる。更には、発生した音響を蓄熱器に通し、蓄熱器の一方の熱を奪うことにより冷却装置としても利用可能である。 この熱音響現象は、古くは、日本では岡山市吉備津神社の「鳴釜神事」、欧州でもパイプオルガン修理の際にパイプが音を出す現象として知られていた。この現象が、近年、可動部がないため故障が少なく、かつ廃熱からエネルギーを取り出す技術へと発展して注目を浴び始めている。 本レポートでは、この熱音響の技術について、最近の動向を調査すべく、国内で公開された特許公報を元に分析を行った。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールTechRadarを用いた


2017.07.19.

+ 次世代労働力、産業用ロボット技術に関する動向分析

少子化・高齢化が叫ばれて久しい日本の人口動態だが、出生率回復のための施策に出遅れ、近年は人口減少社会のフェーズに踏み入っている。  この様な現状にあって将来的には労働力人口の減少による経済停滞が想定されるが、一方で、ロボットによる労働力の代替が経済停滞に対する緩衝の役割を果たすとの見方もある。  そこで、日本における産業用ロボットに関する今後を占うべく、同技術動向について分析する。


2017.07.12.

+ 車載モーターで売上高4兆円を狙う日本電産と 次の買収先選択肢

日本電産(6594)は先月16日、重点分野である車載モーターの売上高を2030年度に「(16年度比15倍の)4兆円に拡大する」との見方を発表した。2010年3月に「車載用モーターで必ず世界一になる。断トツのシェアをとる」と宣言してから7年、同社は着実に車載モーターの売上高を伸ばしてきたとみられるが、2030年度には現状の15倍の圧倒的な拡大が必要となる。本レポートでは、まずその原動力となる同社の車載モーターへの技術開発の注力状況を明らかにする。その上で、これまで買収により事業を拡大・強化してきた同社にとっての車載分野の次の買収先を占うべく、当社の提供する特許俯瞰解析ツールTechRadarによる分析結果を紹介する。


2017.07.05.

+ 日本における中国由来の技術に関する動向分析

先日、中国企業の華為技術(ファーウェイ)が日本国内に工場の建設を行うと発表をした。中国製品は以前より日本国内で販売されているが、意外なことに本格的な工場建設は今回が初との事である。製品の製造・販売において、その販売先国や製造国の法律は順守する必要があり、他社の特許を侵害しない、ということも同様である。このため、今回は日本において、中国に由来していると想定される特許出願の動向を分析する。


2017.06.28.

+ 村田製作所・TDK 特許ポートフォリオから業績についての言及可能性

日本を代表する電子部品メーカーである村田製作所(6981)とTDK(6762)は、両者ともにスマートフォンに代表される情報通信技術市場をメインとするも、業績には大きな差が出てきている(表1.)。過去の特許ポートフォリオを分析することから業績についての言及可能性を探る。


2017.06.21.

+ 生体分子・細胞計測技術の俯瞰的な解析から 次のビジネスチャンスを探る

ジョンズ・ホプキンス大学シドニーキンメルがんセンターのCristian TomasettiとBert Vogelsteinらによって、2017年3月23日にScience誌に発表された論文が大きな話題を呼んでいる。その内容は、がんを引き起こす変異の実のうち3分の2近くの細胞がDNAをコピーする際に起きたエラーが原因であることが、数学モデルから示唆されたというものだ。この研究のNature誌の解説(23 March 2017オンライン版記事, Heidi Ledford)によると、32種類のがんについての計算の結果、がんのドライバー変異のうち、66%がDNA複製の際のランダムなエラーによるもので、環境要因による変異は29%に過ぎず、遺伝性の変異に至っては、5%のみであるという。Vogelstein氏はNature誌の取材に対し、「(DNA複製のランダムなエラーという偶発性の要因、つまり防ぐことが難しい要因の割合が、対処可能な要因である環境要因の割合の2倍強にのぼることから)予防に加え、早期発見や治療が、がんと戦う上での重要なポイントになる」という趣旨の説明をしている。 早期発見は、がんの進行を抑制し、効果的な治療を行う上で不可欠なものである。そして、医療費抑制の観点でも、早期発見に対する社会的な要望は高い。例えば、線虫による尿検体を使ったがん検査に関する九州大学の研究成果が大きなニュースとなったことは記憶に新しい。がんに限らず、様々な疾患の早期診断に役立つ高感度で簡便、かつ安価な検査・分析システムは、大きな市場を形成しうるため、ビジネスチャンスとなるに違いない。 そこで、本レポートでは、こうした早期診断に寄与する生体分子・細胞の測定技術に焦点を当て、現在、主にどのような技術分野が存在するのか改めて整理するとともに、最近注目されている新しい技術・アプリケーションと開発企業について簡単に紹介する。。


2017.06.15.

+ Intellectual Ventures(インテレクチュアル・ベンチャーズ)の特許ポートフォリオ分析および自動車メーカーが注意すべき技術領域の把握

2017年5月1日、日本の自動車業界に激震が走った。トヨタやホンダ等を含む日独の自動車関連メーカーに対して、米国企業の特許を侵害しているとして、米国際貿易委員会(ITC)が調査を開始した。訴訟を起こしたのはIntellectual Ventures(以下「IV」)である。IVはNPEs(Non-Practicing Entity:特許不実施主体)であり、一種のパテント・トロールだと捉えられている(NPEs=パテント・トロールではない)。
 今回の事象を一度整理すると、日独の自動車メーカーに侵害されたと主張しているIVの特許は、米国のメーカー(Encap)が保有していたモーター関連の特許である。これらをIVが買収し、訴訟を起こしている状況である。これについて、「自動車産業はパテント・トロールの残されたラスト・リゾート」という論考もあり[1]、その通りであろう。しかし、それだけでは、今回、米国の自動車関連メーカーを訴えない理由が見当たらない。そこで、米国の政権交代というタイミングも踏まえると、また違った見方ができる。この一連の事象は、IVの新しいイメージ戦略という意味もあるのではないだろうか。トランプ新大統領はアメリカ・ファーストを宣言し、製造業の米国回帰や米国人の雇用創出を公約としている。またパテント・トロールに厳しかったアンチパテント派のオバマ前大統領と比較し、トランプ大統領はプロパテント派であるという見方が強い。このような背景情報を鑑みると、日本やドイツ等の海外メーカーから、米国のメーカーを守るというIVの新しい姿が浮かび上がってくる。このように、新しい米国政権に対して、これまでのパテント・トロールという悪いイメージではなく、米国製造業を守るという良いイメージを持ってもらうための戦略にも見える。この一件で、今後の米国における知財政策やIVの動向は、ますます目が離せなくなった。これは日本にとって、今後大きな影響を与える重大な変化の兆しではないだろうか。  そこで、IVの動向を把握し、訴訟リスクについて予測することは重要になってくる。しかし、IVの実体を正確に掴み、動向調査することは非常に難しい。なぜならば、IV関連企業は数多く存在し、更にはその中で権利譲渡を繰り返しているからである。そこで本レポートでは、得られるIVや自動車メーカーの特許データを俯瞰することで、IVの特許ポートフォリオや自動車メーカーが注意すべき技術領域等を明らかにする。なお、これらの大量の特許データを分析する際は、VALUENEX株式会社が提供するDocRadarやTechRadar Visionを用いた。


2017.06.12

+ 全文閲覧可【学術論文分析】脳と機械のインタラクションに関する研究開発の現状

考えるだけで機械を操作したり、脳とコンピュータの間で直接情報を授受できるとすれば、これは人間にとって究極のインターフェースとなるであろう。このような技術はブレイン・マシン(コンピュータ)・インターフェース(BMI/BCI、以下BMIと称する)と呼ばれている。
 BMIに関しては、車いすの制御や体の不自由な方の意思伝達など、一部の特殊な用途においてすでに実用化が進められているが、ここ数年、さらなる高度化や民生利用につながる動きが出始めている。例えば海外では米国防高等研究計画局(DARPA)が2016年1月に「Bridging the Bio-Electronic Divide」と題し、脳とデジタルワールドの間で前例のない信号分解能およびデータ転送帯域幅を持つインプランタブルな神経インターフェースの開発プログラム構想を発表した。また日本でも内閣府が行う革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)において、「脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現」と題し、平成26年度から脳情報の可視化と制御技術の開発を進めている。そのほか、テスラモータのCEOとして知られるイーロン・マスク氏がNeuralinkという神経系UI技術を開発する会社を設立するなどの動きも見られる。
 BMI研究の歴史は古く、その始まりは1970年代とされている。実際にエルゼビア出版が運営する学術文献データベース「Scopus」でBrain Machine Interfaceを検索すると、1985年には既にこのキーフレーズをタイトルに含む論文が登場している。その後しばらくの期間、BMIに関する論文数は年間で数~数十件程度にとどまり、必ずしも研究が活性であるとは言い難い状況が続いていた(Fig.1)。その後、2003年頃を境に論文数は増加の一途を辿り、現在では年間1,000件以上の報告がある。
 注目が高まるBMIであるが、実際の研究開発がどのようになっているかを知る上では、学術文献レベルでの動向を把握することが一つの方策である。そこで、BMIに係る学術文献をリソースとし、クラスター解析を用いた俯瞰解析を試みた。学術文献の収集には学術文献データベースScopusを利用した。収集対象は、brainと1ワード以内でmachine interfaceあるいはinteraction、computer interfaceあるいはinteractionがタイトル、要約、キーワードのいずれかで共起する2001年以降発表の査読付き雑誌および会議録とした。該当する論文数は約11,000件であった。


2017.06.07.

+ 新規技術開発の最前線、 産業技術総合研究所の技術開発動向推移

国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研という)は、2001年に工業技術院および全国15研究所群を統合再編し設立された研究機関であり、カーボンナノチューブの発見者である飯島澄夫氏や、PAN系炭素繊維の発明者である進藤昭男氏など多くの著名な研究者が在籍している研究機関である。
 産総研では東京、つくば、福島、臨海副都心、北海道、東北、中部、関西、中国、四国、九州の拠点で、エネルギー・環境、生命工学、情報・人間工学、材料・化学、エレクトロニクス・製造、地質調査、計量標準のテーマで企業・大学とともに最先端の研究開発を行っている。
 今回は公開された産総研の特許を収集し、研究開発動向について特許俯瞰ツールTechRadarを用いて調査を行った。


2017.05.31.

+ 自動車業界の最新技術を支える 画像認識の国内プレイヤー動向分析

画像認識に関する技術は、自動車において欠かせないものと成りつつある。新興自動車メーカーのテスラ社は、完全自動運転を目指すにあたり、当面はカメラを主軸にしたセンサー構成にすると発表している。それを支えるのが、画像認識技術である。一方、テスラ社の自動車による運転支援下での死亡事故が起きており、テスラ社は、その原因を画像認識の失敗によるものだとしている。画像認識は自動運転以外に、ドライバーの状態検知や、駐車支援といった安全技術に使われており、その性能の良し悪しが、直接、人命にかかわる技術であると考えられる。
 2016年10月にデンソー(6902)と東芝(6502)が、高水準な画像認識技術を実現するため、そのAIの共同開発を行うことを発表した。そのように、画像認識技術は自動車業界の動向を捉えるうえで外すことが出来ない技術である。そこで、VALUENEXが提供する知財ビックデータ分析ソリューション TechRadarを用いて、自動車に関わる画像認識技術の国内プレイヤーの概況を捉えるべく、日本国公開特許公報による分析を行っていく。


2017.05.24.

+ 手触りを伝達・生成して現実感を向上する 触覚出力インターフェイスの技術開発動向

スマートフォンやゲーム機器、更にはバーチャルリアリティにおいて、触覚フィードバック(ハプティクス)の技術が注目されている。例えば任天堂(7974)が2017年3月に発売した新型ゲーム機器では、コントローラに触覚フィードバック機能があることが話題となっている。
 触覚フィードバックにおいては、利用者に対してどのように触覚を出力するかが技術上のカギとなる。このための触覚出力インターフェイスの技術開発動向はどのようになっているであろうか。本レポートでは、触覚出力インターフェイスに関連する日本国公開特許公報を収集し、弊社の提供する特許解析ツール TechRadar Vision (テックレーダービジョン)により俯瞰レーダーを作成し、分析する。


2017.05.17.

+ Graphene(グラフェン)の実用化競争の行く末は?

Graphene(グラフェン)とは炭素同位体の一種であり、ハチの巣上に敷き詰められた炭素原子一個分の厚みのシートである。鉄鋼の200倍の強度、シリコンの100倍の電気伝導性、光学的特性、熱学的特性等の特徴から期待される夢の材料の一つだ。2010年にマンチェスター大学のAndre Geim と Konstantin Novoselovがノーベル賞を受賞したことから世間に知られるようになった。その存在は古くから知られていたものの、抽出方法が確立されていなかったが、偶然にもセロハンテープではがして得ることができ応用開発への道がひらけた。応用分野として期待されているのは、太陽光パネル、LED、タッチパネルなどである。


2017.05.10.

+ 経済発展著しいシンガポールの各国企業別特許分析

シンガポールは、1965年のマレーシアからの独立当時、貧困にあえいでいた。それが近年では、外国の優れた企業、労働者を積極的に登用し、今やアジア経済発展の中心の一つを担うほどに急激な成長を果たした。欧米や、日本の企業も多数、シンガポールに参入してきた。2011年には、特許件数の急激な増加があり、その前後でのこれら各国企業の動向に関心がもたれる。
 そこで、これら外国企業と、国内勢のシンガポール内での動向を調査すべく、シンガポールに出願された近年の公開特許を元に分析を行った。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールXLUS DocRadarを用いた。


2017.04.26.

+ 大容量化を目指すリチウムイオン電池 ーシリコン負極によるアプローチ

リチウムイオン電池はスマートフォンやタブレット端末などの電子機器や、電気を動力源とするHEV、EVなどの自動車、さらには家庭用蓄電システムなど、様々な用途に広く利用されており、既に我々の生活には欠かせないものとなっている。
 一方、リチウムイオン電池産業は、かつては日本企業がリードしていたが、近年では韓国系や中国系の企業に市場を奪われつつあり、日本企業は厳しい競争を強いられている。その一つの表れがリチウムイオン電池をけん引してきたソニーの撤退である。今後リチウムイオン電池市場において競争力を得るには、さらなる高性能化や低コスト化が必要となる。とくに自動車や家庭用蓄電システムなど、大型電池が重要なマーケットになるとすると、大容量化は必須の課題となると考えられる。
 リチウムイオン電池の大容量化の一つの方法が、負極にシリコンやスズなどの合金系材料を利用することである。リチウムイオン電池負極として広く利用されている黒鉛の場合、リチウムは理論上LiC6(約370mAh/g)で吸蔵される。
 これに対し、シリコンの場合は理論的にはLi4.4Si(約4200mAh/g)と、約10倍の容量が得られることとなる。ただし充放電にともなう構造劣化などによりサイクル寿命が短くなるといった問題点もあり、その開発動向が注目される。そこで、ここでは日本国特許公開公報をリソースとしてクラスター解析を行うことで、リチウムイオン電池におけるシリコン系負極の開発動向およびプレイヤーの分析を行った。


2017.04.19.

+ FINTECH等金融に関連した技術開発の動向

近年、FINTECHといわれている金融に対するIT技術の利用が進んでいる。IT技術自体は広く金融機関でも利用されており、例えばATMやオンラインバンキング、ネット証券等もITの技術を利用しなければ成立しないサービスであるといえる。一方で、ITの利用がさらに進展した場合、金融機関による技術開発や、関連技術を持つベンダーとの連携促進などが想像される。そこで、今回は特に金融に関連した技術開発動向の分析を行った。


2017.04.12.

+ 日本精工と出資先の電動車いすベンチャーWHILLは何を目指すか

日本精工(6471)は今月4日、電動車いすをはじめとしてパーソナルモビリティを手がけるベンチャーであるWHILL, Inc(以下、WHILL)との資本提携を発表した。介護福祉用途や、より自由で安全・快適な移動手段の需要増大が見込まれる中、WHILLは誰もが乗りたがるモビリティを実現すべく、新しいパーソナルモビリティの開発に取り組んでいる。日本精工はWHILLの企業方針に賛同し、出資を通じてWHILLを支援する。両社は、日本精工の「要素部品技術やメカトロ技術」と、WHILLの「モビリティ開発技術」を融合し、パーソナルモビリティの創出と普及に向けて連携を図っていくようである。
 さて、その連携の第一弾として、WHILLのパーソナルモビリティの特長の1つであるオムニホイールに対し日本精工は軸受を提供していく。また、それとともにユーザーにとってより便利で魅力的な機能を両社で実現していくとしているが、どのような機能の実現を目指すのかはプレスリリースでは明らかにされていない。そこで本レポートでは、軸受を中心として長年技術開発を行ってきた日本精工と車椅子分野のこれまでの技術開発の蓄積を、特許俯瞰解析ツールTechRadarにより解析・可視化することを通じて、WHILLがどのようなパーソナルモビリティを実現しうるか、また両社の提携の今後について探った結果を紹介する。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】自動車内装およびHMI研究開発とその動向

自動車を取り巻くが大きく変化している。自動車が誕生したのは今から200年以上前の1769年とされており、最初は蒸気機関で動くものであった。その後、1800年代終盤にガソリンエンジン車が発明され、1900年代になると自動車の量産化が進められた。そして近年ではハイブリッド自動車や燃料電池自動車、電気自動車などといったパワートレインの多様化による環境負荷低減、さらには高度交通管制システム(ITS)や車車間通信、コネクテッドカーなど、外部との情報の授受に係る技術の高度化も進んでいる。また高度運転支援システム(ADAS)や自動運転技術によって、自動車の制御が人の手を離れようとしている。
 このような自動車の変革は、ユーザーにとって特に身近な自動車内装および自動車とドライバーのインターフェース(以下、内装とする)にも影響を与えるものと考えられる。自動車内装に関してはデザイン的な要素も多いが、技術的に進化すべき点も多いものと考えられる。そこで、技術的な観点から自動車内装に対し、どのような研究開発がなされており、それがどのように変化してきたかを知るために、学術文献をリソースとした分析を試みた。
 自動車内装に係る学術文献の収集にはエルゼビア出版の学術文献データベースScopusを利用した。収集対象としては、タイトル、要約あるいはキーワード中に自動車に係るキーワードを含み、かつ内装やキャビンなどのキーワードが共起するものに加え、ドライバーや人とインターフェース、インタラクションやコミュニケーション、HMI、人間工学などが共起するものとした。収集対象は2001年以降に発表された英語で記載されたArticleおよびConference Paperとした。該当する論文数は概ね8000件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】水素社会に向けた研究開発動向の俯瞰- II.水素貯蔵

クリーンなエネルギー源として注目されている水素であるが、その実用化に関してはいくつかの課題が存在する。ひとつは水素が単独では天然にほとんど存在しないため、何らかの手段で製造する必要があることであり、これに関しては前回のレポート(8/16号)にて研究動向の概要を示した。もう一つの課題が取り扱いの難しさであり、爆発限界の広さやガス透過性の高さ、鋼材に対する水素脆性などが課題となる。すなわち、どのように水素を大量かつ安全に貯蔵するかである。そこで、本レポートでは水素貯蔵にフォーカスし、学術文献情報を用いて研究開発動向を俯瞰した。
 水素貯蔵に関連する論文の収集にはエルゼビア出版の学術文献データベースScopusを利用した。収集対象としては、タイトル、要約あるいはキーワード中、「hydrogen」と「storag」あるいは「reserv」が2ワード以内に登場する、2001年以降に発表された英語で記載された査読付き雑誌(Article)とした。該当する論文数は概ね11,300件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】水素社会に向けた研究開発動向の俯瞰- I.水素製造

水素は燃焼しても水しか排出しないクリーンなエネルギー源として注目されている。とくに近年では家庭用燃料電池や燃料電池自動車などの登場により、その注目度はますます高まっている。
 エネルギー源としての水素利用は、政策的にも重視されている。日本では経済産業省が平成26年に水素・燃料電池戦略ロードマップを策定し、平成28年3月に改訂を行っている。その中で、2020年までに家庭用燃料電池を140万台、燃料電池自動車を4万台、そして水素ステーションを160か所程度国内に設置することなどを目標として掲げており、2040年にはトータルでCO2フリーな水素供給システムを確立するとしている1)。水素社会に対する政策的重点化は日本に限ったものではない。米国ではHydrogen Fuel Initiativeを、欧州ではThe Fuel Cell and Hydrogen Initiative (FCH)を立ち上げるなど、世界的な取り組みとなっている。
 期待の高まる水素エネルギーであるが、その一方で、水素は単独では天然にほとんど存在せず、水や炭化水素など、水素を含む原料から何らかの手段で製造することが必要である。さらに水素は空気中、約299℃で発火し、爆発限界は4vol%から75vol%、最小発火エネルギーは0.02mJとなっており、都市ガスの主成分であるメタン(5~15vol%および0.33mJ)よりも容易に発火する2)。加えて水素は原子半径が小さく透過性が高い、鋼材に対し水素脆性を引き起こすなどといった特徴も有しており、取り扱いが難しい物質でもある。そのため、水素社会を実現するためには、水素を「作る」、「運ぶ」、「貯める」といった要素に対する研究開発が不可欠となる。
 注目を集める水素エネルギーであるが、その研究開発はどのようになっているのであろうか。本報では水素社会の実現に向けた3つの要素のうちの一つである水素製造に着目し、その研究開発動向を、学術文献をリソースとして分析した。
 水素製造に関連する論文の収集にはエルゼビア出版の学術文献データベースScopusを利用した。収集対象としては、タイトル、要約あるいはキーワード中、「hydrogen」と「production」、「evolution」あるいは「generation」が2ワード以内に登場する、2001年以降に発表された英語で記載された査読付き雑誌(Article)とした。該当する論文数は概ね25000件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】コンテキストアウェアに関わる研究とその応用

近年、情報科学に係るキーワードとしてコンテキストアウェア(Context aware)という表現が多く見られるようになって来た。コンテキストアウェアは文字通りに理解するのであれば、「文脈や脈絡の気づき」といった意味になるが、ITの世界では「コンピュータがその先の状況や変化を捉える」といった意味合いで利用されている。
 コンテキストアウェアがどのようなものを対象とするかに関してはNISTEPの資料1)に詳しいが、それによれば、コンテキストの対象は資源と利用者に大別され、資源とは情報資源であり、コンテンツの分類や属性を指し、利用者はその属性や意図、目的などと利用者の環境、場所、時間等に分けられる。これらの情報をコンピュータが把握することにより、さまざまなサービスに展開される可能性が生まれる。
 コンテキストアウェアは今後のIT関連サービスにおいて重要な概念となると考えられるが、一方でその意味するところは漠然としており、現状でコンテキストアウェアという「文脈」のなかで、どのようなことが考えられているのかが不明瞭である。そこで、コンテキストアウェアを含む学術文献をエルゼビア出版の運営する学術文献データベースを用いて収集し、クラスター解析を行うことで、その全体像の把握と応用先に関する分析を試みた。
 解析対象とした学術文献はタイトル、要約あるいはキーワード中に「context awar」(はワイルドカード)を含む本文言語が英語の論文(Article)とした。該当する論文数は約3,000件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】インダストリー4.0と要素技術-リファレンス情報を活用した詳細化-

インターネットやクラウド環境、高速無線通信技術などといったICT技術の発達と普及は、我々の生活スタイルを大きく変えてきた。どこにいてもインターネットを経由して情報を参照したり会社の情報にアクセスしたり、さらにはエアコンや照明といった器具の遠隔操作も可能になっている。またバイタル情報を自動的に記録し、解析することで健康管理も出来るようになった。今後はさらにビッグデータの活用やIoTにより、Predictive Analyticsが様々な分野に応用される時代が到来するのであろう。
 ICTによる技術革新の影響は個人の生活レベルにとどまらず、ビジネスの世界にも及んでいる。そのひとつがドイツを中心に進められている、インターネットを活用した製造業の高度化を目指したインダストリー4.0(Industrie4.0)である。
 インダストリー4.0が目指すものは生産システムの高度化であるが、これは単一企業内の話ではなく、「外」との連携を視野に入れたものであり、また製造の高度な管理をコンピュータが支援するものである。これらの意味するところは「標準化」であり、人への依存度の低下である。なお、これは製造現場から人が排除されるという意味ではない。SAPによれば、働く人はより専門性/付加価値の高い仕事に従事でき、さまざまな分野の知識/スキルを習得できるとしている。
 製造業に対しインパクトを持つインダストリー4.0であるが、そこにはどのような要素技術が関連しているのであろうか。またそれに関連する産業はどのようなものがあるのであろうか。ここではインダストリー4.0を構成する要素技術について、学術文献情報をリソースとして分析を試みた。
 インダストリー4.0は2011年頃から使われ始めた言葉であり歴史が浅いため、インダストリー4.0を含む論文のみを見ても全体像の把握は難しい。そこで、ここではタイトル、要約あるいはキーワード中に「Industry4.0」または「Industrie4.0」を含む論文(ソース論文)を軸とし、その論文が引用している論文(子引用論文)、さらには引用論文が引用している論文(孫引用論文)の、都合3階層の文献情報を収集した。データの収集にはエルゼビア出版が運営するScopusを用いた。なお、データ取得の都合上、参考文献はScopusに収録されているデータに限定した。インダストリー4.0の概念は新しく、該当する論文数は約5,800件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】ソーシャルネットワークとその活用に関する研究動向

インターネットやスマートフォンなどの普及に伴い、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が活発になっている。SNSの定義は様々であるため、どこまでをSNSに含めるかで統計値は変わるが、ある調査によれば、SNSの利用者は全世界で13億5千万人(2014年、月間アクティブユーザ)とされている。インターネット利用者数は全世界で29億2千万人(2014年)とされているので、そのうちの約半数が何らかの形でSNSを利用している計算になる。
 SNSの主たる目的は個人間のコミュニケーションであるが、そこには多種多様かつ大量の情報、いわゆるビッグデータが存在していることになる。そのため、SNSから必要な情報を抽出し解析することで、コミュニケーションとは異なる目的への応用が検討されている。実際にSNS情報を利用したマーケット分析やクレーム対策を行う企業や、そのためのサービスを展開する企業も複数登場している。
 今後さらに広がりを見せることが期待されるSNS情報の活用であるが、研究開発はどのような状況になっているのであろうか。ここではSNSを研究対象に含む学術文献をリソースとしてクラスター解析を行うことで、SNSに係る研究開発の取り組みについて分析を行った。分析を行うためのデータソースとしてはタイトル、要約あるいはキーワード中にソーシャルネットワークを含み、かつインターネットやウェブ、オンラインといったキーワードを含む、英語で記載された学術文献(Article)とした。なお、データの収集にはエルゼビア出版が運営するScopusを用いた。該当する論文数は約11,000件であった。


2017.04.06.

+ IoT・AI時代において再び注目される ビジネスモデル特許の動向分析

ビジネルモデル特許とは、ビジネス方法・アイディアがICTを利用することによって実現された発明である。インターネットの発展に伴い、1998年~2000年初頭に大きな話題となり、日本においては2000年に出願が急増した(1999年では約4,000件だったものが、2000年には約19,000件も出願された)。このブームの火付け役は、米国で1998年に起こったステート・ストリート・バンク事件であり、これによって製造業以外の業種(金融、広告等)でも特許権を戦略的に取得・利用することが注目された。有名な例としては、1999年に特許登録された米Amazonのワンクリック特許が挙げられる。
 ブーム当時はビジネスモデル特許という名称から勘違いも多かったため、出願数は2000年をピークに減少し続け、6,000件程度に落ち着いた。しかし、2011年からは出願件数が増加傾向に転じ、2015年は約7,000件となっている。これは、IoTやAIの進展による第四次産業革命において、再びビジネスモデル特許が注目され始めた可能性を示唆している。
 このような潮流の中、ビジネスモデル特許を解説した特許庁のwebページも改訂されており(2017年3月24日更新)、そこではIoTやAIとの関係性について、「IoTの一つのモデルとして、①様々なセンサ等からデータを取得、②取得されたデータを通信、③通信されたデータをクラウド等にビッグデータ化し蓄積、④当該データをAI等によって分析、⑤分析によって生まれた新たなデータを、何らかのサービスへ利活用、⑥IoTにおけるビジネスモデルの確立、という①~⑥からなるモデルを想定した場合、⑤の利活用や、⑥のビジネスモデルの確立において、自社のビジネスモデルが化体したシステムをビジネス関連発明の特許として保護することが可能な場合があります。[1]」と述べている。
 そこで本レポートでは、VALUENEX株式会社が提供するTechRadar Visionを用いて、日本国公開特許公報データをもとに、ビジネスモデル特許に関する動向分析を行った。


2017.03.22.

+ DICと太陽ホールディングスの提携がもたらす セルロースナノファイバー配線基板技術の強化

2017年1月25日にDIC株式会社(4631)が太陽ホールディングス(4626)と資本業務提携を行うことを発表した。DICは、印刷インキからスタートし、現在では自動車、エレクトロニクスなどの多様な業界に向けて製品を提供する総合化学メーカーである。一方の太陽ホールディングスは、ソルダーレジストなどのエレクトロニクス業界向けの製品を提供する化学メーカーである。DICが材料そのものの開発に強みを持ち、太陽ホールディングスが材料の加工に強みを持つ企業であり、DICは自社事業の川下にあたる太陽ホールディングスとの提携によって、マーケティング力を強化し、市場が求める次世代製品の開発に取り組んでいくと発表している。
 そこで、近い将来、市場に投入される可能性がある製品を明らかにするため、VALUENEXが提供する知財ビックデータ分析ソリューション TechRadarを用いて、両社の特許ポートフォリオを可視化し、提携によるシナジー効果を生み出す技術領域を特定する。


2017.03.15.

+ 竹が有効活用できる産業は何か? 課題と利点を併せ持つ材料の利活用

日立製作所(6501)は竹類からカリウムと塩素を溶出させバイオマス燃料とする技術を開発したと発表した。バイオマス燃料に不向きであると考えられてきた竹を有効なエネルギーとして活用できるバイオマス再生循環システムの実現に寄与するとのことである。
 日立製作所の発表では、竹をめぐる近年の課題への言及がある。その課題とは、近年報じられている、放置された竹林の竹が広がり他の樹木の生育を阻害することである。こうした状況にあって、竹林の手入れや伐採が求められるが、このために産業的に竹を有効活用することへの期待が高まっている。竹は独特の弾力性を持ち、古くから竹細工や茶筅などの伝統工芸品に利用されてきた。
 しかし近年はプラスチックなどの代替材料が普及し、竹の需要が低迷している。竹の産業的な利活用をより促進することで、竹林の管理が進み環境保全に資するものと考えられる。そこで、竹の利活用の方法を探るため、竹に関連する日本国公開特許公報を収集し、弊社の提供する特許解析ツール TechRadar Vision (テックレーダービジョン)により俯瞰レーダーを作成し、分析する。。


2017.03.08.

+ 車載配線基板に関する技術開発動向とプレイヤー

自動車に係る技術が急速な変化を示している。その一つはパワートレインの変化であり、ハイブリッドに始まった内燃機関とモータの組み合わせが、プラグインハイブリッドや電気自動車、あるいは燃料電池自動車など、電気をエネルギー源とする方向へと変化しつつある。
 また、自動車の情報化も大きな変化の一つになるであろう。これまでの自動車は基本的には自動車1台で情報や制御が完結していたが、今後は路車間通信や車車間通信など、外界との情報のやり取りが多くなることが予想される。さらには運転支援システムの高度化や自動運転など、より高度な制御技術が導入されることになるのであろう。
 これらの変化は自動車に搭載される電気・電子部品の増大につながり、今後市場としては大きく成長する可能性を秘めている。今後活性化することが期待される自動車の電気・電子部品であるが、その基盤となる技術の一つにプリント配線基板がある。プリント配線基板は近年スマートフォン市場の急速な成長により市場を伸ばしてきたが、ここにきてスマートフォン自体の市場に鈍化が見られるようになってきた。そのため、次のターゲットの一つが自動車であるとされている。
 そこで車載用配線基板に関する国内での開発状況とプレイヤーについて、日本国特許公開公報をリソースとしてクラスター解析を行った。