ENEOS
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ENEOS株式会社様はアジアを代表するエネルギー・素材企業として、石油にとどまらず、電気、天然ガス、化学品、再生可能エネルギー、水素など、多岐にわたる事業を通じて、社会の発展と活力ある未来づくりに貢献されている企業様です。今回、VALUENEX Radar Documentsをご利用頂いている知財企画グループの山本様と木口様に、ご導入背景やご利用方法について、お話を伺いました。
山本 暁様
中央技術研究所
技術戦略室 知財企画グループ
木口 美和様
中央技術研究所
技術戦略室 知財企画グループ
ご導入経緯について
トライアル期間の利用を通して、ツールでどう会社へ貢献できるかの説明を実施
所属されている部門とそのミッションについて教えてください。
山本様:知財企画グループに所属しており、グループ全体のマネジメントをしています。会社全体の知財ポートフォリオの管理が主な業務で、その他にはテクニカルなマーケティングやデューデリジェンスといった新規領域の事業検討をしています。
木口様:山本のマネジメント下で解析チームを率いています。チームメンバーと新規事業領域の知財解析をして、その内容について山本から事業目線でのレビューを受けてから、依頼者側にレポートし、戦略検討の議論に加わっています。
VALUENEX Radarの導入検討はどのような経緯でしたか?
木口様:かねてからこういった言語解析の重要性は今後増していくだろうと考えていましたが、他社の簡易的な言語解析の機能では不足感がありました。これから本格的に知財解析に取り組んでいこうというタイミングで、シリコンバレーの駐在員よりVALUENEXの紹介を受け、新規事業の検討との相性の良さを感じ、導入に至りました。
導入検討時の様子はいかがでしたか?
木口様:これを導入することでどのように会社に貢献していくのかということについて説明を求められました。その点については導入検討時に利用できるトライアル期間を使って、ある素材をテーマとした開発トレンドの可視化に挑戦し、「今後こういったことを社内に発信していけるようになります」と説明しました。トライアル期間は非常にありがたかったなと思います。
VALUENEX Radarをご利用されてみていかがでしたか?
木口様:VALUENEX Radarの読解は難しい面があると思います。利用当初は細かいところに疑問を持つというよりもビジュアルのインパクトに圧倒される人が大多数でしたが、繰り返し詳細なマップの見方を説明して議論を重ねるうちにたくさんの疑問を投げかけてもらえるようにもなりました。事業検討に活かすために真剣にマップを理解しようと、興味関心を持ってくれる方が増えた結果だと思うので、浸透し始めたことに手応えを感じています。
山本様:通常の特許出願権利化業務とは違う切り口を我々企画は求められていて、その一つがIPランドスケープのような、知財情報をどう経営や事業の戦略に結び付けていくか、という観点での提案です。特許情報というと難解な長文でとっつき難いイメージですが、VALUENEX Radarは情報の全体像を可視化して見せることが出来るので、特許に馴染みが薄い事業部門であっても、自身が持っている情報と俯瞰図から得られる情報を紐づけて思考することが容易になります。その結果、活発なディスカッションをリードすることができています。実際の活動では、VALUENEX Radarだけでは足りないところを他のツールと組み合わせながら、議論を進めています。
木口様:あまりにも知財色が濃いレポートを出してしまうと、「あぁ、知財って専門分野の人達の世界だから」と距離を置かれてしまったり、思考停止に陥ったりしがちです。しかしVALUENEX Radarは件数や権利範囲などがマスクされ、良い意味で知財色が薄まるため、依頼者側との議論の距離がぐっと近づくのを実感します。このツールがあることで、特許に不慣れな人達からの会話の引き出し方についてあまり悩むことがなくなりました。
VALUENEX Radarはどのように利用されますか?
木口様:かつての知財解析では研究所との連携がメインでしたが、最近は戦略検討の初期段階に関与すべく事業部門との連携を密にしています。VALUENEX Radarは、事業部門との活動にも使うようになっています。VALUENEX Radarを使うと、全く想像していなかった面白そうなものを見つけられたり、当初の予想に反した気付きを得られたりするため、早めに軌道修正できるように、議論の初期段階で活用することが多いです。
新規事業検討にはどのようにツールを活用されていますか?
木口様:新規事業検討時には自社開発だけでなく他社と組むことも視野に入れており、大企業だけでなくスタートアップにも注目して検討しています。VALUENEX Radarを利用すると、大手企業とスタートアップの注力領域の違い、強みの違いというのをしっかりと表現できますので、戦略検討の担当者が自信を持って企画提案を持ち込めることにも繋がっています。
スタートアップの多くは特許件数が少ないのですが、VALUENEX Radarを使うことで大手企業の何十件何百件という特許に埋もれることなくしっかりと情報を拾うことが出来るので、私はスタートアップ検討にも相性が良いのではないかと思っています。
活用後の様子について
俯瞰図自体から直接的な回答が出なくても議論のきっかけになり、より多くの発言を引き出すことが出来る
俯瞰図を見るようになってどのような気付きがありましたか?
木口様:自分が想像していたよりも、多くの競合がいるということです。競合といっても会社がたくさんいるわけではなく、例えばお茶を開発するとした場合に、競合はミネラルウォーターだけだと思っていたものの、実はゼリー系飲料や機能性食品も競合になり得るというようなイメージです。認識出来ている範囲を超えて見るべき観点があるという気付きが得られるので、社内からは「事業検討の軌道修正をしました」という声を頂きました。
VALUENEX Radarを利用するメリットについて教えてください。
山本様:VALUENEX Radarが得意とする事と他のツールが得意とする事が分かれていて、用途の棲み分けが出来ていると思います。 これまでは、知財解析のレポートは一方通行になりがちで、事業部門は「専門家が何か言っているな」と聴くだけで、1~2の質疑応答を経て「ありがとうございました」で終わってしまうことが多くありました。VALUENEX Radarはグラフィカルであって、領域間距離が「近い」「遠い」という誰でも簡単に意見が言える特徴があるので、その絵から直接的な解答が出て来なくても議論のきっかけになり、より多くの発言を引き出すことが出来るのが大きなポイントかなと思います。
また、ノイズのような情報の中に気付きが隠れている、という事が言葉としてはわかっても、そこに目を向けるのは容易なことではなく、他の解析ツールだと埋もれてしまうんですね。VALUENEXはそこに目が行くというのが特徴的で良いなと思っています。
知見の無い分野を解析する際の使い勝手はいかがですか?
木口様:難しさはありますね。意外な動きであると受け止めるか、母集団がおかしいと受け止めるか、その見極めには試行錯誤と経験がいるところだと感じます。
山本様:間違った前提のもとデータを出して議論をしても決して正解なことではないので、そこは知財側でコントロールしつつ、注意して取り組んでいます。
活用ノウハウについて
「ノイズ」と「広がり」は紙一重、母集団として流し込むデータは適度のノイズが入った状態で解析した方が面白い議論に繋がる
利用当初の自分へアドバイスするとしたらどのような事を伝えますか?
木口様:最初に流し込む母集団は過度にきれいにする必要はない、という事を伝えたいですね。「ノイズ」と「広がり」は紙一重だからです。いわゆる知財の調査だと、いかにノイズを落とすかに神経を注ぐのですが、他のツールと違いVALUENEX Radarの場合は、適度にノイズが入った状態で解析した方が面白い議論に繋がるという実感があります。まずはノイズかどうかは気にせず、「①大まかに作った母集団で俯瞰図を見てみてみる。②母集団を調整して俯瞰図を再描画する。③何がどう変わるかを読み解く。」を繰り返す事が気付きを得る近道だと思いますね。
どのようなタイミングでノイズが大切だと感じましたか?
木口様:何万件という規模の解析を初めて実施した時に思いましたね。求めているテーマと直接的には関係のないクラスタができたのですが、時系列上ぱっと出てぱっと消えて、そこを上書きするように求めているテーマが発達するという見え方をしていまして、その一連の動きが、周辺技術に大きな影響を与えていました。俯瞰図上でどうしてこれがここに出てくるのかと疑問に思い公報を見てみると、遠い親戚くらいに関係はあるものの発明の名称や分類に着目するとノイズとして除外してしまいそうな発明でした。しかし、これが起点となって技術が進み今に至るという発展の道筋がわかりました。あまり綺麗に母集団を作ってしまうと、そうした情報が見えず面白みもなくなってしまいます。事業のタネやきっかけというのも、ノイズ付近にありそうだなと思っています。
得られた活用ノウハウはどのように社内で共有されていますか?
木口様:チームMTGでツールをどう使って何がわかったかの共有をしています。ただ、身に付けるためには実際に手を動かしてみることが大切ですし、テーマによってどの知見が活きてくるかは変わってくるので、VALUENEXメモ帳のようなものを用意し、そこに過去の取り組みや得られた失敗の情報を書き留めるようにしています。
木口様:Radarマップの小さい変化をいかにうまく見つけられるかという点に関してはまだまだ経験不足だと感じています。ただ、この小さなうねりをキャッチするというのは今後社内でも求められていくので、私自身もさらにスキルを磨きたいですし、そういった動きをよりよく拾えるようなツールの機能拡充にも期待したいです。
山本様:VALUENEX Radarなどを使って色々な解析ができるようになりました。ただ、結果を伝える相手が現状はまだ限られています。経営の意思決定にも貢献できるものだと理解していますので、こういった活動をもっと社内に浸透させて、経営企画も含めた他部門とのコネクションを作っていきたいと思っています。
木口様:他社ツールは特許件数など細かい情報に目が行きがちなのですが、VALUENEX Radarは他の特許の解析ツールと明らかに使っている脳が違うと感じます。細かな数字やどの会社がどんな請求範囲の特許を出しているかなどを気にせず、業界のトレンドやストーリーを頭の中で組み立てることが出来るので、IPランドスケープで求められる提案力に課題を感じている方は、是非使ってみると良いのではないでしょうか。
山本様:IPランドスケープにおいては事業部門側の意見をどのように引き出すかというコミュニケーションが重要だと思っています。そのきっかけ作りとして非常に有効なので、オススメしたいと思います。