社名 東亞合成株式会社
POINT
- 特許以外に論文やアンケートなどのテキストデータも俯瞰可能
- 「ここまでできるのか」と反応を得られ、経営層からも高評価
- 知的財産部員がIPランドスケープを実践するきっかけにも繋がる
- 用途探索や顧客探索、企業やニーズの動向推測など様々な取り組みを実施
東亞合成株式会社様は瞬間接着剤「アロンアルフア」のような最終消費財から、色々な産業の基礎素材となる化学原料まで、「化学」を中心に「基幹化学品」「ポリマー・オリゴマー」「接着材料」「高機能無機材料」の大きく4つのセグメントから、身近な暮らしを支える様々な製品を製造している企業様です。今回、VALUENEX Radar Documentsをご利用頂いている研究開発本部知的財産部の山本様に、ご導入背景やご利用方法について、お話を伺いました。
東亞合成株式会社
研究開発本部知的財産部名古屋オフィス
山本 万里子様
【ご導入経緯について】
特許以外に論文やアンケートなどのテキストデータも俯瞰でき、俯瞰図の作成方法がブラックボックスではなく開示されているので、VALUENEX Radarを選択
ーー 所属されている部門のミッションや、ご自身の業務はどういったものになりますでしょうか?
知的財産部に所属し、IPランドスケープを専門に担当しています。事業貢献を念頭に、新規テーマの探索や技術の導入、M&Aなどに参画しています。IPランドスケープは私の他にも何人か兼務で実践している者がいますが、専任で対応しているのは私のみです。 取り組み始めてから現在二年目で、まだ知的財産部全員で実践するにはハードルが高いので、元々解析経験のある私が突破口を作り、そこから間口を広げていけるように取り組んでいます。専任として窓口が一本化されているので、事業部の方からすぐにフィードバックをもらえる環境で、修正点があればすぐに対応できますし、IPランドスケープの実践の導入段階として良いと考えます 。
ーー 弊社ツールの導入に至った経緯は何でしょうか?
IPランドスケープを推進していくにあたっては、まずマクロで現状把握をしてから、ポイントを絞ってミクロに分析します。その中でも、まずはマクロに技術を俯瞰したいと考えていました。技術を俯瞰するツールは様々ありますが、特許以外に論文やアンケートなどのテキストデータも俯瞰でき、俯瞰図の作成方法がブラックボックスではなく開示されているので、VALUENEX Radarを選びました。また、解析対象文章が日本語だけでなく、英語や中国語に対応しつつ、ツール画面のUIやマニュアルが日本語という点も、導入時に考慮したメリットでした。
ーー 他社ツールと比較してVALUENEX Radarはいかがでしたか?
従来利用していたツールだと利用できるのが特許だけでしたし、英語ベースのUIでした。IPランドスケープは、他部門に向けてストーリーを構築して情報を発信し、多くの知的財産部員が実践し様々な経営・事業戦略に貢献することが大切だと考えます。VALUENEX RadarはUIが日本語と英語の両方あるので、依頼内容や依頼元に応じた言語で解析してアウトプットを出せ使い勝手が良かったです。言語によって他部門の結果の受け入れスピードや納得感が異なりますし、解析初心者の知的財産部員が、日本語でツールを使えることで解析のハードルが下がり、自分もIPランドスケープを実践してみようというきっかけ作りにも繋がりました。また、従来のツールによっては、設定が柔軟に出来て自由度が高い反面、使い方が難しく使いこなせないものもあり、使用者が限られていました。VALUENEX RadarはシンプルなUIでその辺りのバランスが良いと感じます。
【ご利用当初について】
結果の資料は事業部や営業の方のひらめきのきっかけづくりに役立ち、依頼部署以外の他部署へも波及
ーー ツール利用当初はどのような解析からスタートしましたか?
新しい製品候補の用途探索や、その顧客候補の検討のために、特許と論文を一つの母集合としてまとめて解析をしました。最初に特許とはデータ形式の異なる論文を追加する分析に取り組みましたので、VALUENEXのサポートも活用しつつ進めました。複数種類のデータを合わせて解析する際は、文字コードなどデータ処理の基礎知識や技術が必要でしたが、それらを習得するのは自分の解析能力向上や、ツールの利用用途拡大、そして最終的に解析結果の説得力を向上させるという意味でも良いので、積極的に取り組みました。 分析後の報告資料は見やすさに配慮して作成したので、営業の方がお客様巡りをするための資料としてそのまま使えましたし、「この業種でこういった結果だったら、この辺りもいけますよね」と事業部や営業の方のひらめきのきっかけづくりとしても役立ちました。結果的にその資料は依頼部署以外の他部署へも波及しました。VALUENEX Radarを利用し始めた初期にこういった結果を得られましたので、比較的スムーズに社内でIPランドスケープの活動を受け入れていただき、現在も活動を推進しています。
ーー 当時の自分へアドバイスするとしたらどのような事を伝えますか?
当初はCluster Map Viewerを知らずにWebツールで分析をしていたのですが、最初からCluster Map Viewerを利用すれば良かったですね。Webツールで実施した結果について他部門より「良い用途候補が見つかったので、さらに深堀分析をしたい」と反響があったのでその対応をしたのですが、Webツールでは他部門と分析データを共有できないため、最初からCluster Map Viewerを使っていれば、解析したデータを他部門にそのまま渡して他部門で解析を引き継ぐことができるので、作業効率がよかったと思いました。
ーー Cluster Map Viewerはどのような点が良いですか?
解析に利用したデータを他部門も操作・分析できる状態で共有出来ることは、Cluster Map Viewerの本当に大きな売りだと考えます。他社の製品でそういった共有が出来るものは私の知る限りでは知りませんね。PDFや俯瞰図の画像データの共有は他社の製品もできますが、詳細な内容を知りたい場合は、契約しているIDや、パスワード、指定されたIPアドレスが必要な場合が多いので、他部門からの反響や要望にその都度対応するには作業効率が悪かったです。他社製品の中には、動く分析データを他部門でも利用できるものもありますが、あくまで簡易版の動く分析データですので、私たちが実際に解析に使用している分析データと操作が異なり、使い勝手が良くないですね。
※ Cluster Map Viewerはご契約内容により利用頂ける組織範囲が異なりますので、詳しくはVALUENEXまでお問合せ下さい。
【ご活用方法について】
用途探索が最も多く、顧客候補の探索や、課題・ニーズの動向推測など、様々な分析を実施
ーー 現在実施される解析はどのようなものが多いのでしょうか?
解析テーマとしては既存製品の新しい用途探索が多く、あとは新規顧客候補の探索ですね。VALUENEX Radarは、以前実施した新規用途探索のレポートが社内の依頼部署以外の部署へも波及して認知が広がった経緯があり、その利用方法を皆さんが知っているので「あんな感じでお願い」と依頼がきます。依頼元は事業部と研究開発で、我々知的財産部を含め連携して取り組んでいます。 新規用途探索の場合、引用被引用関係を元に探したり、FタームやIPC分類から探したりと、依頼内容や目的によって進め方を変えています。試行錯誤している最中で難しいですが、他部門と随時相談し近い距離感で進めています。これが上手くいかなければ次はあちらと複数のプランを用意して、中間報告で提案し対話しながら進めています。 報告する際は、Cluster Map Viewerで経時変化や気になる出願の色付けが出来るよう事前に準備をしておき、実際に操作しながら話し合いを行い、次の行動を決めています。Cluster Map Viewerは研究開発や事業部の方も使えるので知的財産部以外からみた気づきも得られるのでありがたいです。俯瞰図は最初にドンと出すと全体像が伝わりやすいですね。今回そちらの技術は分析せずこのエリアの技術を深堀しています、といった形で共有化すれば、無駄な分析をしなくて済むようになり、お互いの業務効率も向上します。 結果を共有したあとは、「新しいことをもっと深堀したい」という追加の要望があれば、その内容に最適な分析や俯瞰図を作成してCluster Map Viewerのデータを共有しています。あとはCluster Map Viewerの使い方がわからない時のフォローなどもしますね。
ーー 新規用途探索を進める際はどのような点が大事ですか?
今までどの用途を調べたのか、という社内情報を確認してから着手することです。それをせずに進めてしまうと、得られた結果を出しても「それ知ってるよ」と後出しされるケースがあるので、依頼元・依頼先共に無駄な時間を費やすことになります。そうならないためにも事前に全て共有し、どこまで調べてあったのかを共通認識化させてからスタートします。これを実施することで、「今まではこうでした、今回新しくここが増えました」と全体像を示せるようになり、相手にとっても報告内容がわかりやすいものになります。探索した結果の共有は、リストや報告書、あとはこれからどうするかのアクションを促す提案を含めて取り組んでいます。
ーー 深堀分析ではどのようなことをしていますか?
例えばある企業が今後どうなっていくかの推測であったり、キーパーソンを見つけたり、次に注目される課題や、どういったニーズが今後要求されるのかを調べるなど、様々なことを分析・解析しています。 俯瞰図で深堀の対象とする領域を限定して中身を見ていく場合もありますし、検討候補となる領域が俯瞰図内にあり過ぎる場合には、他の解析方法でチャレンジすることもあります。結果を報告する相手にとってわかりやすく、説得力がある手段を選んで実施しています。
ーー 領域作成はどのように実施していますか?
領域はコンター図でまず大まかに作成し、どういった技術がどの辺りにあるのかセミマクロに把握したうえで、範囲を調整しています。初回打ち合わせ共有時の「こんな感じで分析・解析を進めていきますけどいかがですか」というのはコンター図レベルの領域作成で実施していますね。
【活用後の様子について】
中央部に主な技術が出て、外側にレアな技術が出てくることで、依頼元の方がよく知る技術を確認せずにすみ、内容確認の作業効率が向上
ーー 分析結果を共有してみていかがでしたか?
何度か深堀の依頼に繋がり、現在も我々が報告・提案した内容について他部門で検討を進めている状況の案件がありますね。俯瞰分析はIPランドスケープ活動を開始するまではあまり実施しておらず、よくあるパテントマップの解析のみだったので、「知財部がここまでできるのか」という反応を得られました。経営層にも報告して高評価をいただいたりもしています。VALUENEX Radarはぱっと見てわかりやすいですね。各事業部が持っているエリアを掲示して、「この分野が増えていますよ」と経時変化を見せることも状況把握がしやすいです。依頼も増えていますよ。
ーー その他VALUENEX Radarを利用してみて良かったことはありましたか?
面白い特徴は、中央部に主な技術が出て、外側にレアな技術が出てくることですね。他のツールだと、レアな技術の探索を実施しにくい場合や、外側にレアな技術が出ていても、VALUENEXほどわかりやすい形では出てこない場合があります。VALUENEXでは、レアな技術が見たいという要望があれば、すぐにそのレアな技術データを抽出できるので、依頼元の方がよく知られている技術を確認せずにすみ、内容確認の作業効率が向上しますね。内容を見ると、「何でこれが」というものも見つかりますが、中には面白いものあり参考になりました。
【ツールの社内展開について】
ストーリーを立てて報告することで「こんな感じで他の案件も」と次のアクションに繋がっていく
ーー 分析結果を共有する際にどのような事を心掛けていますか?
IPランドスケープを進める上で、相手に刺さる内容でなければいけないと考えますので、コンサル的な資料の作り方を参考に取り入れています。見やすさ、ストーリー、1枚でわかる、といった観点ですね。 特にストーリーを立てる際には、興味を持ち”なぜなぜ”と考察を重ねていくことが大事です。そして、この結果になるのであれば他のデータから見たらこうなるのではないか、とさらに別の切り口からも検証をすることで、ストーリーに厚みが生まれ、説得力が増すので、やはり”なぜなぜ”が大事です。また、俯瞰図から着目する箇所が発散しすぎてしまわないように随時確認や打ち合わせをしています。最終的に何を調べたいのか、どういった結果が欲しいのか、目標や目的を聞いて、市場予測や顧客情報など様々なデータをもとに自社の実施していない箇所と照らし合わせつつ、相手の求めているところから発散しないように進める必要があります。こういった流れである程度こちらでストーリーを立てて報告すると、納得してもらえ、「こんな感じで他の案件も」と次のアクションに繋がっていきます。 共有時に何も提案がなく、「こうなりました」で終わってしまうと「で?」とボールを渡された他部門の方も困ります。報告にはアクションが伴いますので、こちらからは提案を通して相手にボールを渡し、そのボールをどう処理するのか相手にもアクションを求め、双方win-winで進めていくようにしています。
ーー 社内メンバーのスキルを上げるうえで、どのような活動をしていますか?
随時OJTで指導をしています。様々なツールを使う必要があり、随時更新されるツールを個別に細かなマニュアルを作ることは出来ないので、最低限の簡単な使用マニュアルを共有化しつつ、詳細や個別用途に応じた使い方についてはマンツーマンで教えるようにしています。また、外部講習を活用することで資料の作成方法や現在の流行りを吸収し、未来志向に繋がる社外のエッセンスを積極的に取り込んでいます。VALUENEXが以前ユーザー向けに開催していたオンラインイベントのVALUENEX Analytics Meetupの内容についても、とても参考になりました。
【今後について】
「解析をやろう」という知的財産部員や他部門の一部の方も増加、これからさらに他部門でも利用を広げセレンディピティのきっかけ作りへ
ーー 弊社ツールを通して、今後ご担当業務をどのように推進するご予定でしょうか?
VALUENEX Radarは、他部門へ展開しやすいというのが売りだと考えています。「解析をやろう」という知的財産部員や他部門の一部の方も増えてきていますし、これからさらに他部門でも利用していただき、セレンディピティのきっかけ作りに活かしていきたいですね。簡単な解析から実践し、モチベーションを高め難しい解析にチャレンジし、様々な解析ができる人材を増やす予定です。例えば種類の異なるデータを複合してVALUENEX Radarで分析し解析するのは難しいのですが、複数の情報源からデータを統合するデータ作業能力や、さまざまな情報を収集する能力はもちろん、ストーリー構築能力や経営層・事業部と協働して事業をサポートする能力等の様々な取り組みに対応できる知的財産部員の育成にも力を入れています。
※セレンディピティ:素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること(wikipediaより引用)
ーー 弊社ツールについてどのような点が改善されるとより良いでしょうか?
まずは領域作成がしやすくなるよう改善してほしいですね。あと、Cluster Map Viewerでクラスタを検索する機能について、様々なツールの特許の検索式の作成方法には慣れているのですが、Cluster Map Viewer独特の検索方法のため気になります。知的財産部以外の様々な方が使用できるよう検索条件を使いやすくしていただきたいのはもちろん、知的財産部のような普段から複雑な検索式を利用するユーザーも満足できるよう、近傍一致検索など操作が簡単にできる機能や、複数の検索条件を複合して利用できる機能などを付けて欲しいです。その他UI面でもCluster Map ViewerがVALUENEX RadarのWebツールのように見栄えや操作性が良くなると嬉しいです。 一方、VALUENEX RadarのWebツールは動作が重いので、動作速度を改善して欲しいです。また、パナソニック株式会社の提供するPatentSQUAREからVALUENEX Radarへデータを転送する機能がありますが、その際に発明の名称を文書解析の対象に利用出来ない点を改善して欲しいですね。
ーー 最後にVALUENEX Radarを検討されている企業へ一言お願い致します
IPランドスケープが注目される前から三位一体の部門間連携が大事と言いますが、VALUENEX Radarは他部門と共通言語化しやすいので、そこがポイントだと考えますね。また、これまでは特許データベースを元に知的財産部が解析して他部門と共有する流れが主流でしたが、世の中的にもDXが盛んになってきており、営業の方も含めて様々な部門・部署で分析・解析を進めていく流れが加速していますので、そういった観点でも契約を検討されると良いのかなと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。