2017.04.06.

+ 【学術論文分析】水素社会に向けた研究開発動向の俯瞰- I.水素製造

水素は燃焼しても水しか排出しないクリーンなエネルギー源として注目されている。とくに近年では家庭用燃料電池や燃料電池自動車などの登場により、その注目度はますます高まっている。
 エネルギー源としての水素利用は、政策的にも重視されている。日本では経済産業省が平成26年に水素・燃料電池戦略ロードマップを策定し、平成28年3月に改訂を行っている。その中で、2020年までに家庭用燃料電池を140万台、燃料電池自動車を4万台、そして水素ステーションを160か所程度国内に設置することなどを目標として掲げており、2040年にはトータルでCO2フリーな水素供給システムを確立するとしている1)。水素社会に対する政策的重点化は日本に限ったものではない。米国ではHydrogen Fuel Initiativeを、欧州ではThe Fuel Cell and Hydrogen Initiative (FCH)を立ち上げるなど、世界的な取り組みとなっている。
 期待の高まる水素エネルギーであるが、その一方で、水素は単独では天然にほとんど存在せず、水や炭化水素など、水素を含む原料から何らかの手段で製造することが必要である。さらに水素は空気中、約299℃で発火し、爆発限界は4vol%から75vol%、最小発火エネルギーは0.02mJとなっており、都市ガスの主成分であるメタン(5~15vol%および0.33mJ)よりも容易に発火する2)。加えて水素は原子半径が小さく透過性が高い、鋼材に対し水素脆性を引き起こすなどといった特徴も有しており、取り扱いが難しい物質でもある。そのため、水素社会を実現するためには、水素を「作る」、「運ぶ」、「貯める」といった要素に対する研究開発が不可欠となる。
 注目を集める水素エネルギーであるが、その研究開発はどのようになっているのであろうか。本報では水素社会の実現に向けた3つの要素のうちの一つである水素製造に着目し、その研究開発動向を、学術文献をリソースとして分析した。
 水素製造に関連する論文の収集にはエルゼビア出版の学術文献データベースScopusを利用した。収集対象としては、タイトル、要約あるいはキーワード中、「hydrogen」と「production」、「evolution」あるいは「generation」が2ワード以内に登場する、2001年以降に発表された英語で記載された査読付き雑誌(Article)とした。該当する論文数は概ね25000件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】コンテキストアウェアに関わる研究とその応用

近年、情報科学に係るキーワードとしてコンテキストアウェア(Context aware)という表現が多く見られるようになって来た。コンテキストアウェアは文字通りに理解するのであれば、「文脈や脈絡の気づき」といった意味になるが、ITの世界では「コンピュータがその先の状況や変化を捉える」といった意味合いで利用されている。
 コンテキストアウェアがどのようなものを対象とするかに関してはNISTEPの資料1)に詳しいが、それによれば、コンテキストの対象は資源と利用者に大別され、資源とは情報資源であり、コンテンツの分類や属性を指し、利用者はその属性や意図、目的などと利用者の環境、場所、時間等に分けられる。これらの情報をコンピュータが把握することにより、さまざまなサービスに展開される可能性が生まれる。
 コンテキストアウェアは今後のIT関連サービスにおいて重要な概念となると考えられるが、一方でその意味するところは漠然としており、現状でコンテキストアウェアという「文脈」のなかで、どのようなことが考えられているのかが不明瞭である。そこで、コンテキストアウェアを含む学術文献をエルゼビア出版の運営する学術文献データベースを用いて収集し、クラスター解析を行うことで、その全体像の把握と応用先に関する分析を試みた。
 解析対象とした学術文献はタイトル、要約あるいはキーワード中に「context awar」(はワイルドカード)を含む本文言語が英語の論文(Article)とした。該当する論文数は約3,000件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】インダストリー4.0と要素技術-リファレンス情報を活用した詳細化-

インターネットやクラウド環境、高速無線通信技術などといったICT技術の発達と普及は、我々の生活スタイルを大きく変えてきた。どこにいてもインターネットを経由して情報を参照したり会社の情報にアクセスしたり、さらにはエアコンや照明といった器具の遠隔操作も可能になっている。またバイタル情報を自動的に記録し、解析することで健康管理も出来るようになった。今後はさらにビッグデータの活用やIoTにより、Predictive Analyticsが様々な分野に応用される時代が到来するのであろう。
 ICTによる技術革新の影響は個人の生活レベルにとどまらず、ビジネスの世界にも及んでいる。そのひとつがドイツを中心に進められている、インターネットを活用した製造業の高度化を目指したインダストリー4.0(Industrie4.0)である。
 インダストリー4.0が目指すものは生産システムの高度化であるが、これは単一企業内の話ではなく、「外」との連携を視野に入れたものであり、また製造の高度な管理をコンピュータが支援するものである。これらの意味するところは「標準化」であり、人への依存度の低下である。なお、これは製造現場から人が排除されるという意味ではない。SAPによれば、働く人はより専門性/付加価値の高い仕事に従事でき、さまざまな分野の知識/スキルを習得できるとしている。
 製造業に対しインパクトを持つインダストリー4.0であるが、そこにはどのような要素技術が関連しているのであろうか。またそれに関連する産業はどのようなものがあるのであろうか。ここではインダストリー4.0を構成する要素技術について、学術文献情報をリソースとして分析を試みた。
 インダストリー4.0は2011年頃から使われ始めた言葉であり歴史が浅いため、インダストリー4.0を含む論文のみを見ても全体像の把握は難しい。そこで、ここではタイトル、要約あるいはキーワード中に「Industry4.0」または「Industrie4.0」を含む論文(ソース論文)を軸とし、その論文が引用している論文(子引用論文)、さらには引用論文が引用している論文(孫引用論文)の、都合3階層の文献情報を収集した。データの収集にはエルゼビア出版が運営するScopusを用いた。なお、データ取得の都合上、参考文献はScopusに収録されているデータに限定した。インダストリー4.0の概念は新しく、該当する論文数は約5,800件であった。


2017.04.06.

+ 【学術論文分析】ソーシャルネットワークとその活用に関する研究動向

インターネットやスマートフォンなどの普及に伴い、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が活発になっている。SNSの定義は様々であるため、どこまでをSNSに含めるかで統計値は変わるが、ある調査によれば、SNSの利用者は全世界で13億5千万人(2014年、月間アクティブユーザ)とされている。インターネット利用者数は全世界で29億2千万人(2014年)とされているので、そのうちの約半数が何らかの形でSNSを利用している計算になる。
 SNSの主たる目的は個人間のコミュニケーションであるが、そこには多種多様かつ大量の情報、いわゆるビッグデータが存在していることになる。そのため、SNSから必要な情報を抽出し解析することで、コミュニケーションとは異なる目的への応用が検討されている。実際にSNS情報を利用したマーケット分析やクレーム対策を行う企業や、そのためのサービスを展開する企業も複数登場している。
 今後さらに広がりを見せることが期待されるSNS情報の活用であるが、研究開発はどのような状況になっているのであろうか。ここではSNSを研究対象に含む学術文献をリソースとしてクラスター解析を行うことで、SNSに係る研究開発の取り組みについて分析を行った。分析を行うためのデータソースとしてはタイトル、要約あるいはキーワード中にソーシャルネットワークを含み、かつインターネットやウェブ、オンラインといったキーワードを含む、英語で記載された学術文献(Article)とした。なお、データの収集にはエルゼビア出版が運営するScopusを用いた。該当する論文数は約11,000件であった。


2017.04.06.

+ IoT・AI時代において再び注目される ビジネスモデル特許の動向分析

ビジネルモデル特許とは、ビジネス方法・アイディアがICTを利用することによって実現された発明である。インターネットの発展に伴い、1998年~2000年初頭に大きな話題となり、日本においては2000年に出願が急増した(1999年では約4,000件だったものが、2000年には約19,000件も出願された)。このブームの火付け役は、米国で1998年に起こったステート・ストリート・バンク事件であり、これによって製造業以外の業種(金融、広告等)でも特許権を戦略的に取得・利用することが注目された。有名な例としては、1999年に特許登録された米Amazonのワンクリック特許が挙げられる。
 ブーム当時はビジネスモデル特許という名称から勘違いも多かったため、出願数は2000年をピークに減少し続け、6,000件程度に落ち着いた。しかし、2011年からは出願件数が増加傾向に転じ、2015年は約7,000件となっている。これは、IoTやAIの進展による第四次産業革命において、再びビジネスモデル特許が注目され始めた可能性を示唆している。
 このような潮流の中、ビジネスモデル特許を解説した特許庁のwebページも改訂されており(2017年3月24日更新)、そこではIoTやAIとの関係性について、「IoTの一つのモデルとして、①様々なセンサ等からデータを取得、②取得されたデータを通信、③通信されたデータをクラウド等にビッグデータ化し蓄積、④当該データをAI等によって分析、⑤分析によって生まれた新たなデータを、何らかのサービスへ利活用、⑥IoTにおけるビジネスモデルの確立、という①~⑥からなるモデルを想定した場合、⑤の利活用や、⑥のビジネスモデルの確立において、自社のビジネスモデルが化体したシステムをビジネス関連発明の特許として保護することが可能な場合があります。[1]」と述べている。
 そこで本レポートでは、VALUENEX株式会社が提供するTechRadar Visionを用いて、日本国公開特許公報データをもとに、ビジネスモデル特許に関する動向分析を行った。


2017.03.22.

+ DICと太陽ホールディングスの提携がもたらす セルロースナノファイバー配線基板技術の強化

2017年1月25日にDIC株式会社(4631)が太陽ホールディングス(4626)と資本業務提携を行うことを発表した。DICは、印刷インキからスタートし、現在では自動車、エレクトロニクスなどの多様な業界に向けて製品を提供する総合化学メーカーである。一方の太陽ホールディングスは、ソルダーレジストなどのエレクトロニクス業界向けの製品を提供する化学メーカーである。DICが材料そのものの開発に強みを持ち、太陽ホールディングスが材料の加工に強みを持つ企業であり、DICは自社事業の川下にあたる太陽ホールディングスとの提携によって、マーケティング力を強化し、市場が求める次世代製品の開発に取り組んでいくと発表している。
 そこで、近い将来、市場に投入される可能性がある製品を明らかにするため、VALUENEXが提供する知財ビックデータ分析ソリューション TechRadarを用いて、両社の特許ポートフォリオを可視化し、提携によるシナジー効果を生み出す技術領域を特定する。


2017.03.15.

+ 竹が有効活用できる産業は何か? 課題と利点を併せ持つ材料の利活用

日立製作所(6501)は竹類からカリウムと塩素を溶出させバイオマス燃料とする技術を開発したと発表した。バイオマス燃料に不向きであると考えられてきた竹を有効なエネルギーとして活用できるバイオマス再生循環システムの実現に寄与するとのことである。
 日立製作所の発表では、竹をめぐる近年の課題への言及がある。その課題とは、近年報じられている、放置された竹林の竹が広がり他の樹木の生育を阻害することである。こうした状況にあって、竹林の手入れや伐採が求められるが、このために産業的に竹を有効活用することへの期待が高まっている。竹は独特の弾力性を持ち、古くから竹細工や茶筅などの伝統工芸品に利用されてきた。
 しかし近年はプラスチックなどの代替材料が普及し、竹の需要が低迷している。竹の産業的な利活用をより促進することで、竹林の管理が進み環境保全に資するものと考えられる。そこで、竹の利活用の方法を探るため、竹に関連する日本国公開特許公報を収集し、弊社の提供する特許解析ツール TechRadar Vision (テックレーダービジョン)により俯瞰レーダーを作成し、分析する。。


2017.03.08.

+ 車載配線基板に関する技術開発動向とプレイヤー

自動車に係る技術が急速な変化を示している。その一つはパワートレインの変化であり、ハイブリッドに始まった内燃機関とモータの組み合わせが、プラグインハイブリッドや電気自動車、あるいは燃料電池自動車など、電気をエネルギー源とする方向へと変化しつつある。
 また、自動車の情報化も大きな変化の一つになるであろう。これまでの自動車は基本的には自動車1台で情報や制御が完結していたが、今後は路車間通信や車車間通信など、外界との情報のやり取りが多くなることが予想される。さらには運転支援システムの高度化や自動運転など、より高度な制御技術が導入されることになるのであろう。
 これらの変化は自動車に搭載される電気・電子部品の増大につながり、今後市場としては大きく成長する可能性を秘めている。今後活性化することが期待される自動車の電気・電子部品であるが、その基盤となる技術の一つにプリント配線基板がある。プリント配線基板は近年スマートフォン市場の急速な成長により市場を伸ばしてきたが、ここにきてスマートフォン自体の市場に鈍化が見られるようになってきた。そのため、次のターゲットの一つが自動車であるとされている。
 そこで車載用配線基板に関する国内での開発状況とプレイヤーについて、日本国特許公開公報をリソースとしてクラスター解析を行った。


2017.03.01.

+ 大日本印刷がトップ 国内加速器関連技術動向分析ー

最近、九州大学の森田教授のグループが、アジア初の新元素を発見し、「ニホニウム」と命名されたニュースが話題に上がったのは記憶に新しい。この研究には、理化学研究所の超伝導リングサイクロトロン加速器が欠かせない装置であった。同じく、日本原子力開発機構では、素粒子・原子核研究のみならず、物質、生命に関する研究が行われているが、これらでは、J-PARC(大強度陽子加速器施設)が重要な実験施設となっている。 これらの加速器は国産の技術で開発された優れた装置である。そこで、本レポートでは日本における加速器全般に関する技術の動向を調べるべく国内の特許情報を用いて、その開発動向を調べた。分析には、VALUENEX株式会社が提供するテキストマイニングによる俯瞰ツールXLUS TechRadarを用いた。


2017.02.22.

+ KKRは傘下企業間の相乗効果を起こせるか

米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は先月13日、日立製作所(6501)子会社の日立工機(6581)株式の取得を目的とした公開買付けを発表した。インフラなどに注力する日立製作所にとって工具が主力の日立工機はノンコア事業であり、保有株を手放した。KKRはその受け皿となった形だが、日立工機にとってもKKRのグローバルネットワークやリソースの活用がメリットとなる。
 これに先立ちKKRは、昨年11月に日産自動車(7201)系列最大手のサプライヤーであったカルソニックカンセイ(7248)のTOBを発表していた。また、15年にはパイオニア(6773)のDJ機器事業(現・PioneerDJ株式会社)を買収したほか、14年にはパナソニック(6752)のヘルスケア事業(現・パナソニックヘルスケア株式会社)を買収するなど、近年日本企業の買収を活発化させている。
 しかも、いずれも技術開発型企業であり、各社の間に技術的な相乗効果が見込める可能性がある。そこで本レポートでは、KKR傘下のこれらの企業の国内特許出願を対象に、当社の提供する特許俯瞰解析ツールTechRadarにより解析・可視化することを通じて、各社の相乗効果を探った。